研究課題/領域番号 |
11J05437
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
行平 大地 九州大学, 大学院・農学研究院, 特別研究員(DC1)
|
キーワード | MALDI-MS / 代謝物分析 / 相関解析 / ストレス応答 / システム生物学 |
研究概要 |
代謝物レベルの時系列データから代謝制御システムの動態を解析する手法を開発するために、本年度はマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析計(MALDI-MS)によるハイスループット代謝物質量分析技術を基盤とした代謝解析技術の提案に取り組んだ。細胞代謝における転写翻訳制御に比べ、代謝物の反応時間スケールはさらに短いものであると考え、代謝物レベル動態を秒スケールにて分析できる手法を発展させた。本分析手法では、分析時間そのものが極めて短いこと以外に、サンプル処理のスループットが極めて高く、工程中の代謝物ロスが少ない点も特徴である。これにより、大腸細胞中のヌクレオチドプールおよび糖リン酸プールの状態を簡便に追跡することに成功した。現在構築している解析法は一般的に認知されている代謝物相関解析を時間方向へと自然に拡張したモデルであり、ある一定の短時間以上の相関を追跡することで代謝物の一時的相関を表現している。代謝物全体の経時的な相関の強さを示す時系列相関プロファイルから、クラスタリングやネットワーク解析などにより特徴を抽出した。大腸菌細胞に炭素源摂動を与えた場合の代謝物レベルで観察される緊縮応答を代謝物相関により評価したところ、その応答が刺激応答的に極めて短時間のうちに相関が発生し、また短期間で消滅することを見出した。このような代謝物動態に関する情報は、今後代謝物の動的モデルを構築する上で貴重なデータとして応用できると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに提案してきたハイスループット代謝物分析手法や新規の解析法の開発が予想より大きく展開し、代謝システムのモデル化およびin vivoの代謝物レベル解析など予定の課題を十分に達成できなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に則り、がん細胞培養系の実験を精力的に進める。LC-MS分析によるターゲット分析系を新たに構築したので、代謝物濃度の絶対定量を行う予定である。
|