研究課題/領域番号 |
11J05445
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
林 亜希子 東北大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 道徳判断 / fMRI / 嘘 |
研究概要 |
道徳判断の特徴として同じ行為であっても時と場合に応じて善いと判断されたり悪いと判断されたりする。この特徴を検討するため、反社会的な嘘(登場人物の嘘によって、他者が被害を受けるシナリオ)と向社会的な嘘(登場人物の嘘によって、他者が利益を得るシナリオ)という目的の異なる2種類の嘘に対して被験者がどのように道徳判断をするのかについてfMRI (functional magnetic resonance imaging)を使用して検討した。解析の結果、行動データでは、(1)登場人物が嘘をつくことで他者が被害を受けるシナリオは「不適切」と判断される割合が多く、(3)登場人物が嘘をつくことで他者が利益を得るシナリオは、「適切」と判断される割合が多かった。画像データにおいて、両者における共通の賦活領域は認められず、この結果は、これら2種類の嘘に対する道徳判断を可能にさせる神経基盤が、それぞれ独立した神経ネットワークで構成されていることを示唆している。以上に記したように、平成23年度は実験結果をまとめることができ、研究が進展したと言える。 道徳判断の解明には、実験的状況と現実との差異、文化的な背景など、残された課題は多いが、道徳判断や道徳的行動に関わる脳活動を詳細に調べることで、人の意思決定などの社会行動における脳のメカニズムの一端を明らかにすることが可能と考えられる。また医学的観点からは、社会的行動の異常、特に道徳的な判断・行動の異常を呈する脳損傷患者の病態の理解に貢献するものと考えられる。本研究の成果が、一部の認知症患者にみとめられる反社会的行動の神経機構の解明や、将来的には症状の早期診断等の一助となることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に基づき、健常被験者40名を対象としたevent-relatedf MRI実験を行った。また、実験で得られた画像データの解析を行い、道徳判断に関与している脳領域について検討し、一通りの結果を博士論文としてまとめた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、研究結果を論文にして国際雑誌への投稿を行っていきたいと考えている。道徳判断の解明には、実験的状況と現実との差異、文化的な背景など、残された課題は多いが、道徳判断や道徳的行動に関わる脳活動を詳細に調べることで、人の意思決定などの社会行動における脳のメカニズムの一端を明らかにすることが可能と考えられる。
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