研究課題/領域番号 |
11J05461
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤井 ひかる 東京大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
キーワード | 単純ヘルペスウイルス / UL12 / ヌクレアーゼ / リン酸化 |
研究概要 |
単純ヘルペスウイルス(HSV-1)がコードするUL12はヌクレアーゼとしての働きを持つ。UL12はその欠損ウイルスにおいて増殖性が100倍から1,000倍低下することから、ウイルス増殖に重要な役割を果たすことが示唆されている。しかし、ウイルス増殖機構におけるその詳細な役割や制御機構については未知である。本研究ではプロテオーム解析により、UL12の相互作用タンパク、そしてリン酸化部位の同定を行うことで、UL12のウイルス増殖に果たす詳細な役割や制御機構について明らかにすることを目的とした。 プロテオーム解析の結果同定されたリン酸化部位について、アミノ酸置換を行うことでリン酸化能消失変異体ウイルスを作製した。その結果、野生株のウイルスとは異なる表現系が得られ、増殖性が野生株と比較して著しく低下した。更に、本変異体ウイルスの復帰株及び恒常的リン酸化を模倣する産生アミノ酸置換体においては、野生株と同様の表現系が得られたことから、本リン酸化部位のリン酸化が表現系に関与していることが示唆された。また、これらの表現系はUL12のヌクレアーゼ活性能消失変異体ウイルスにおいて観察されるものとは異なった。 本結果は、今回同定されたリン酸化部位がヌクレアーゼ活性能とは異なる機能を制御していることを示唆している。更に、今回作製したリン酸化部位変異体ウイルスは増殖性が著しく低下したことから、本リン酸化部位の上流キナーゼを解明することで、これを標的とした抗ウイルス薬の開発につながる可能性がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定では質量解析を行い、その結果得られたリン酸化部位の変異体ウイルス作製までを1年目で終える予定であったが、2年目で行う予定であった作製した変異体ウイルスの表現系の解析まで行っているため。
|
今後の研究の推進方策 |
作製した変異体ウイルスについて、これまでUL12において知られている表現系が得られるか観察を行う。更に、表現系が得られたリン酸化部位についてはその上流キナーゼの同定を行う。また、質量解析により得られたUL12と相互作用すると推定されるタンパクについて、その相互作用の意義を解明する。
|