昨年度より検討中であったIP39の重合により形成される逆平行2重鎖の間をIP39のどの部位が結合を担っているか、この点から解析が始まった。IP39はチロシンがリン酸化修飾を受けることが知られているが、チロシンは細胞内C末鎖にのみ存在する。そこで抗リン酸化チロシン抗体からFab部位を精製してIP39の2次元結晶に作用させて解析を行い、立体構造情報の収集に努めた。Fabが結合した3次元構造は、重合鎖2列の間隙の箇所のみの電子密度が極端に低下しており、他の構造に顕著な変化が見られなかった。これは重合鎖同士を結合する部位にFabが作用したために、構造が不安定になったためと考えられる。つまり、IP39は細胞内C末鎖を介して相互作用する可能性を示唆している。 これまで得られていた構造情報にもデータ収集を重ねることで、この3量体内でIP39が非対称性に配向していることが判明した。1分子と他の2分子は脂質膜中における配向が異なっており、1分子が脂質膜に対して垂直方向軸を回転軸に1800向きを変えて、他の2分子に配向していることが分かった。この構造様式には3量体における相互作用が3種存在する事をしめしており、先述のC末鎖同士の相互作用を含めて、IP39単分子は4種の分子間相互作用を構築できることを示唆している。これらのmulti-interactionがミドリムシ細胞膜表面に見られるIP39の天然性の線状重合鎖構築に寄与していると考えられる。 IP39に見られる分子の並び方は、claudinが構築するTJs-strandの重合様式を示唆している可能性があり、今後のclaudinの機能および構造解析において重要な知見、テンプレートとなると思われる。本研究結果がNature communicationsに発表された。
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