研究課題
本研究は、総体として、同型配偶・異型配偶・卵生殖の各段階の生物の間で染色体領域ゲノムを比較するという縦のベクトルと、各生物における有性生殖関連遺伝子ネットワークの詳細な解析という横のベクトルを双方ともに大きく進展させることを目的とする。つまり、これまでの群体性ボルボックス目での有性生殖の進化生物学的研究を進める性特異的遺伝子領域の配列構造比較に加え、クラミドモナスの性決定遺伝子の下流因子を探索し、配偶子形成と性決定の分子機構を解明する。本年度は、9月までは京都大学大学院理学研究科植物分子遺伝学研究室で、10月からはアメリカ合衆国Donald Danforth Plant Science Centerにおいて研究を遂行した。前年度に引き続いて、単細胞同型配偶緑藻クラミドモナスの性決定因子MIDタンパク質の下流で制御される遺伝子のChIP-seq法による同定を目指し、ヘマグルチニンエピトープタグを融合したMIDタンパク質をコードする外来遺伝子の導入・発現を実施した。得られているクラミドモナス形質転換体を利用して、平成25年度はChIP-seq法によるMIDタンパク質の結合配列の決定を進める予定である。これと並行して、MID結合DNA配列の試験管内人工進化(SELEX)による推定も進行中である。グルタチオンSトランスフェレースを融合したクラミドモナス、ゴニウムまたはボルボックスのMIDタンパク質を大腸菌で発現させて抽出・精製し、グルタチオンレジンによってランダム二本鎖DNAプールから適切な配列をもった断片を結合させ選択し、選択された断片をPCR法によって増幅して再度選択するという操作を繰り返すことで、各々のタンパク質に親和性を持つDNA配列を推定できると期待される。群体性ボルボックス目藻類の性染色体領域配列の決定と比較に向けて、東京大学および国立遺伝学研究所と共同で同型配偶ゴニウムの全ゲノム配列決定が進行中であるが、この過程で得られた葉緑体およびミトコンドリアの両オルガネラゲノム配列をPLoS ONE誌に報告した。
2: おおむね順調に進展している
エピトープタグ付き性決定因子配列を導入したクラミドモナス形質転換体の作出が予定通り完了している。さらに、ゴニウムのゲノム配列決定を受けて、性決定領域の進化過程の全貌が判明しつつ有る。
作出されたクラミドモナス形質転換体を用いて、クロマチン免疫沈降法によりMID下流で制御される遺伝子群のリストアップを進める。また、ゴニウムのゲノム配列決定で判明した性決定領域の進化過程の全貌を論文にまとめて出版する。
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PLoS ONE
巻: 8 ページ: e67177
doi:10.1371/journal.pone.0057177
Molecular Biology and Evolution
巻: 30 ページ: 793-797
doi:10.1093/molbev/mst002
巻: 30 ページ: 1038-1040
doi:10.1093/molbev/ms1018