研究課題/領域番号 |
11J05514
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
浅野 良輔 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 銀河進化 / 化学進化 / ダスト進化 / 星形成 |
研究概要 |
本研究は、銀河に存在するダストの量やサイズ分布、空間構造が銀河に与える影響を第一原理からモデル化し、銀河進化を理解することを目的としている。本年度では、研究計画の第一段階としていた、各ダストプロセスのダストサイズ依存性を考慮した銀河のダスト進化モデルを構築した。銀河のダスト進化や星形成率、スペクトルはダストのサイズ分布に大きく影響しているため、ダストサイズ分布進化は銀河進化を理解する上で極めて重要な要素である。構築したモデルから、現在考えられているダスト質量進化モデルで考慮されているダストプロセス[AGB星、超新星爆発、超新星爆発によるダスト破壊、星間雲中でのダスト表面上への重元素降着(ダスト成長)]だけでは、現在の銀河系のダストサイズ分布、特に小さいダスト(0.01μm以下)の量をまったく説明できないことが分かった。この小さいダストは、星からの遠紫外線などの短波長の吸収(吸収される波長∝ダストサイズ:Mie 理論)に大きく影響するため、銀河のスペクトル(観測量)を正確に理解するためにはこのままでは問題である。 そこで、本モデルでは小スケールダスト形成のため、ダスト同士の衝突による破砕プロセス(シャッタリング)を考慮することによってこの問題を解決した。シャッタリングは銀河内の至るところで起こるとされており、モデルへの導入は自然である。なお、シャッタリングの効果については、今まで何人かの研究者によって調べられてきたが、第一原理から全宇宙年齢に渡ってダストサイズ分布進化を解くモデルは本研究が初である。またシャッタリングにより、小さいダスト量が増加し、より低い銀河年齢でダスト成長が起こる、つまり銀河のダスト量増加の時期にも影響を与えるという極めて重要な結果を得た。この点は、高赤方偏移銀河のダスト量の起源は星かダスト成長か、という未解決問題において、ダスト成長を強く示唆する結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
各ダストプロセスのサイズ分布を考慮したモデルを、プログラムに組み込む段階で計画していた時間よりも大幅に掛かってしまった。また、当初考えていたダストプロセスでは、ダストサイズ分布をまったく説明出来なかったため、新たな点を加えるために時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
現在まで多少遅れてはいるが、研究に大きな支障はでていないので、残り2年も計画通りに研究を進めていく。まず、Hirashita&Yan(2009)を参考にダストの集積プロセス(コアギュレーション)をモデル化し、ダストサイズ分布を改良する。さらに、銀河のスペクトル進化を解くため、銀河スペクトルモデルの先行研究[例えばTakeuchi et al.(2005)]を参考にして、銀河のスペクトル進化モデルを完成させる。その後、空間情報をモデルに組み込む。この際、例えばメガグレインモデル(Inoue 2006)を用いて行う。最後に、銀河の星、ガス、ダストの空間分布を考慮した大規模N体シミュレーションを構築したモデルに組み込み、全宇宙年齢的銀河の化学力学進化モデルを構築し、銀河進化の謎に迫る。
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