研究課題/領域番号 |
11J05548
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
原川 紘季 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 系外惑星 / 視線速度法 |
研究概要 |
我々は視線速度精密測定によって、すばる望遠鏡を用いた金属量豊富な太陽型星周りの系外惑星探索国際プロジェクト「N2Kコンソーシアム」と、岡山天体物理観測所(OAO)の188cm望遠鏡を用いた系外惑星探索を精力的に進めている。太陽型星周りの系外惑星は現在までに多く見つかっているが、現在もなお、軌道パラメータの分布領域を逸脱するような全く新しい性質を持つ系外惑星が発見されている(e.g.Harakawa et al. 2010).また、プロジェクト開始当初のデータの蓄積により、これまで見えてこなかった太陽系の木星と同等以上の長周期軌道の惑星の検出も視野に入っており、今後とも継続的なモニタリングが不可欠である。同時に、恒星質量と惑星系の関連性を調べるための手段として、太陽よりも質量が大きい恒星(早期型星)についても、探索が行われているが、現在ではOAOでのサーベイなどにより巨星という晩年の段階に至った恒星についてのみ分かってきている状況で、必ずしも主系列段階の状態を反映しているとは言えないため、進化の影響を除くために早期型主系列星周りの惑星探索が必要である。 こういった問題意識のもとで、私は初年度研究計画に則り、OAOにてN2Kプロジェクトにて惑星系と思われる天体について集中的に追観測を行った。同時に長周期惑星の傾向を探るため、プロジェクト初期段階で視線速度の変動が小さいために追観測が行われなかった天体についても観測を行い、結果2つの惑星が同一の天体を周回する複数惑星系を同定した。さらにその他2つの惑星系と思われる天体を特定した。これらは惑星形成論に重要な提言を与える可能性があり、現在論文執筆中である。 早期型主系列星周りの惑星探索の第一歩として、私はすばる望遠鏡でヒアデス星団に属するA型星について超高SN比観測によりノイズを極限まで抑えたデータを取得し、視線速度測定精度を調べることでこれらの天体での惑星探索が可能かどうかを調べた。その結果、恒星の自転速度が大きい天体については惑星検出に十分な精度が得られなかったが、解析アルゴリズムの最適化や観測天体のパラメータを制限するなどの工夫で惑星検出可能な精度を追求していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初想定した通りのペースで観測データの蓄積は進んでおり、複数の惑星系の検出も行われた。 また、早期型星についても有用なデータの取得が行われた。 当初の研究計画と比べると、概ね予想通りの進捗と言える。
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今後の研究の推進方策 |
N2Kコンソーシアムの状況は先述の通り概ね順調に進んでいるが、今後は単純な惑星発見だけに留まらず、統計的な議論を想定したデータの取得を行い、まだよく分かっていない長周期惑星について言及ができるようにターゲット選定をさらに注意深く行う必要があるだろう。 早期型主系列星については視線速度測定精度がまだ十分とは言えないので、疑似スペクトルによる解析シミュレーションなどから、最適な精度が得られるSN比や恒星パラメータ領域を制限することが必要である。このことは同時に解析アルゴリズムの最適化にも繋がり、太陽型星での測定精度向上などにもフィードバックできる重要な課題であるので、精力的に進めてゆきたい。
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