研究課題/領域番号 |
11J05556
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
住吉 篤郎 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 六方晶窒化ホウ素 / リチウム / X線回折 / 層間化合物 |
研究概要 |
六方晶窒化ホウ素(hBN)はグラファイトと同様の原子層積層構造である。hBNにアルカリ金属を挿入した層間化合物(hBNIC)は理論計算から絶縁体から金属化することが予言されているが、作製の成功例は無い。我々はLi-hBNICを作製し、金属化の機構を明らかにすることを目的に研究を展開している。 粉末X線回折(XRD)と透過型電子顕微鏡(TEM)観察から、Li挿入前後での層間距離や面内B噌結合距離などの母相晒の格子構造の変化を報告した。グラファイト層間化合物での研究を参考にするとhBMCでのBN母相の結合長の変化は、Li原子からBN原子層への電荷移動により、金属化につながる電子状態の変化が起こっている可能性がある。この点を明らかにするために、電気伝導率や磁化率などの物性測定が必要である。 しかし、現行の金属LiとhBNを封入熱処理する方法ではLi-hBMc生成の再現性や収率が低く、複数の測定は困難だった。そこで、採用期間1年目では良質の試料作製手法開発を目的とした。 第一にこれまでに成功例のある金属LiとhBNの封入熱処理の条件探索を行った。反応容器の材質や形状を工夫して反応環境を制御し、仕込み組成と反応温度を様々に変化させたがLi-hBNIC相の再現性は向上しなかった。 第二に、Li3NとhBNを熱処理してLi3BN2を作製する先行研究中の、Li-GICに似たXRDパターン観測の例に注目した。反応条件と生成相をより詳細に調査した結果、Li-hBNIC相が、以前よりも仕込み組成比や反応温度に対して非常に再現性良く得られた。 今後は、Li3NとhBNの封入熱処理で作成したLi-hBNICについて、電荷移動の程度を見積もるために、SQUID、PPMS、MPMSを使用した電気伝導率、磁化率測定を行い、グロー放電発光分析により試料中の組成分析を行い、Li-hBNICの組成比を決定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的である高圧合成による高結晶性の試料は得られていないが、従来の方法で出発原料と反応条件を変更して主なターゲットであるLi-hBNIC相を非常に再現性良く得られるようになった。申請書において第2年度で計画していた物性測定は行える見込みであるので、研究の進展は概ね順調であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、Li3NとhBNの封入熱処理で作成したLi-hBNICとLi3BN2試料について、電荷移動の程度を見積もるために、SQUID、PPMS、MPMSを使用した電気伝導率、磁化率測定を行う。 また、グロー放電発光分析により試料中の組成分析を行い、Li-hBNICの組成比を決定する。 この結果と構造観察の結果を合わせてLi-hBNICの構造物性についてまとめる。
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