研究課題
本研究では、軟骨魚類の胎生が進化の過程でどのように獲得されたのか解明することを目指している。前年度の研究により、軟骨魚類の卵生から胎生への進化において、エイ類がその中間段階の生殖システムを持つ可能性が示された。そこで、胎生エイ類であるマンタの胎児が子宮内でどのような行動をしているのか美ら海水族館と共同で明らかにし、その結果を論文として発表した(Tomita et al., 2012)。この研究により、胎生エイ類の胎児は羊水の中に溶け込んでいる酸素を鯛呼吸することによって酸素を取り入れていることを明らかにした。この酸素供給のメカニズムは、卵生とヘソの尾を形成する胎生の間をつなぐ中間段階である可能背がある。さらに、これまで謎とされていたエイの呼吸行動の仕組みの詳細を解明し、論文として発表した(Tomita et al., 2013)。この研究によりエイ類は5番目の鯉をポンプとして利用することによって呼吸していることが明らかとなった。データの解析はカリフォルニア大学デービス校で行った。以上の研究により、卵生から胎生への進化において胎児の呼吸メカニズムが大きく変化してきたことが明らかになった。現在、卵生やヘソの尾を作る胎生のサメの胎児がどのよう呼吸メカニズムを持っているのか研究中である。さらに、胎生進化を化石から解明するためにクリーブランド自然史博物館に数多く所蔵されている化石軟骨魚類、板皮類の調査を行った。現在、そのデータを解析中である。
2: おおむね順調に進展している
卵生から胎生への進化において、エイ類が中間的な生殖メカニズムを持っていることが明らかになり、インパクトのある論文として公表することができた。米国における化石種の調査も進んでおり、研究は順調といえる。
胎生エイ類との比較を行うため、沖縄美ら海水族館と共同で、エコー検査を用いた卵生や胎盤型胎生の胎児の呼吸メカニズムの解明を進めていく。胎生進化の解明に向けて化石軟骨魚類のデータをさらに増やす必要があり、現在米フィールド博物館での調査を計画中である。
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Zoomorphology
巻: (online first)
10.1007/s00435-012-0185-9
Biology Letters
巻: 8 ページ: 721-724
10.1098/rsbl.2012.0288