研究概要 |
放射線治療において、理想的な線量分布を実現するために、逆計算を用いて空間的に変調された照射強度分布を求める手法として、IMRT(Intensity Modulated Radiation Therapy;強度変調放射線治療)が近年開発された。その中でも最も治療精度が高く、治療時間を短縮する方法の一つとして、VMAT(回転型強度変調放射線治療)が注目されている。これは、放射線射出部分(ガントリ)を連続回転させ、角度ごとの照射強度や照射形状を逆計算により最適化する手法である。我々は、VMAT治療中に治療用MV放射線と直交軸に設置された診断用kVエックス線を同時に曝射し、CBCT画像を取得する方式を開発した。この治療中CBCT同時撮影技術を用いて、VMAT治療中の腫瘍位置に対する治療前と治療後の相対的な位置ずれの大きさを世界で初めて検証した。(K.Nakagawa et al.,Radiotherapy and Oncology, Vol.90(2009)p422 and Acta Oncologica, First published on 25 July,(2009)) 本研究では、肺定位放射線治療において、WAT中に撮影された4次元コーンビームCT(4D-CBCT)を用いた、治療中の腫瘍の動きの検証や、実際の投与線量分布の再構成等、より高精度な放射線治療に向けた検証システムの確立を目指す。 4D-CTの各位相で照射されるべきビームをインバースプランニングにより最適化し、位相に同期して照射するという治療法は、すでに準備段階を終えており、ここ数年内での実用化が期待される。こうした治療法は複雑であるがゆえに、治療ごとの検証システムを確立しておくことが、安全で確実な治療を提供する上できわめて大事である。また、治療中の腫瘍の動きや線量分布取得のシステムの確立は、治療ごとに実際に投与された線量分布を積算することによる、adaptive radiation therapy(経時的線量最適化放射線治療)に向けての重要なSTEPである。
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