研究課題/領域番号 |
11J05832
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山本 詩子 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 磁気共鳴画像 / 拡散テンソル画像 / 神経線維追跡 / 曲率偏差 / 統合失調症 / 下縦束 / 下前頭後頭束 |
研究概要 |
精神疾患に対し脳MRI画像を用いて定量評価を行なう際に、拡散テンソルMRIを用いた神経線維追跡手法において、複数の神経線維の交叉部など拡散テンソルMRIで拡散の異方性が低下する領域において追跡の精度を向上させることは疾患の特徴を定量的に見出すために重要である。そこで、追跡中に異方性が低下した位置から前方に離れた位置における線維束を探索し、異方性低下部の後で追跡を行なって条件を満たす探索点を特定し、異方性低下部をベジエ曲線で補間し、補間部分とその前後における線維束の軌跡が持つ曲率を最適な追跡結果の評価に用いる方法によって異方性低下に対処する手法を開発した。手法の妥当性評価には、神経線維が直線的に、また曲線的に交叉した様子を模した拡散テンソルMRIのシミュレーション画像と、実際のヒト脳の拡散テンソルMRI画像を用いた。追跡精度は先行研究における追跡の目的領域到達率と比較して最大で52.1%の増加を確認し、手法の妥当性が示された。 また、疾患の診断支援システム構築のためには疾患を特徴づける指標となる病変を見出すことが不可欠である。そこで、代表的な精神疾患である統合失調症患者における大脳白質病変を定量評価する複数の新たな指標を見出した。連合線維束である下縦束と下前頭後頭束を評価対象として神経線維追跡を行なった。開始面での追跡線維束の断面積・異方性の強さを表すFA・見かけの拡散係数を表すADCを患者と健常者を比較するための指標として算出し、両線維束において断面積及びADCに患者と健常者で有意な差があることが確認できた。先行して患者と健常者の有意差を既に見出している上縦束における評価指標と合わせて、これらの指標を用いることで統合失調症を定量的に評価できる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載した年次計画の1年目の計画である神経線維追跡手法の改良をほぼ完了し、精神疾患の定量評価システム構築という目的に向けて、2年目の計画である複数の評価指標を組み合わせるための準備にも取り掛かっているため、順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
神経線維追跡手法の改良において、最適な軌跡選択のために申請書に記載していた手法だけでは補間領域が二次元的になるため、実際のヒト脳の画像に適用するためには三次元的にする必要が生じた。よって、補間曲線を三次元曲線にし、最適な軌跡選択には曲率に合わせて捩率も加味することで三次元的な追跡に対処する。また、認知・精神疾患の定量評価システム構築のため、複数の定量評価指標を見出すことが不可欠であるが、開発した神経線維追跡手法に加えて、画像処理技術の習得に訪れた米ジョンズホプキンス大学で学んだ脳MRI画像の標準化法や脳組織ごとに画像を分割する方法などを含めて、精神疾患を定量的に評価し診断を支援するシステムを構築していく。
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