研究概要 |
病原体などの感染が起きると、我々の体内では抗体が産生され、病原体の排除が行われる。B細胞からの抗体産生は濾胞ヘルパーT細胞と呼ばれる特殊なT細胞により誘導され、長期液性免疫応答においては、濾胞ヘルパーT細胞から分化したメモリー濾胞ヘルパーT細胞がこの役割を果たす。長期液性免疫応答の成立には、胚中心と呼ばれる微小環境が必要であり、ここには濾胞ヘルパーT細胞の一部が局在して胚中心濾胞ヘルパーT細胞と呼ばれている。この胚中心濾胞ヘルパーT細胞こそがメモリー濾胞ヘルパーT細胞の主な前駆細胞と考えられ、その分化や局在の制御により長期液性免疫応答を操作できると考えられる。私は、この胚中心濾胞ヘルパーT細胞に注目し、局在の決定分子を明らかにすることを目的として研究を行った。 我々は以前、スフィンゴシン1リン酸受容体であるS1PR2のmRNAが濾胞ヘルパーT細胞以外のCD4陽性細胞と比べて濾胞ヘルパーT細胞に多く発現していることを明らかにした(Kitano,Moriyama et al.,Immunity,2011)。さらに、S1PR2はいくつかの細胞種で細胞移動に関わることが報告されていることから、濾胞ヘルパーT細胞におけるS1PR2発現に注目して研究を行うこととした。S1PR2はこれを検出する抗体が無い為、まず、レポーターノックアウトマウスを作製した。このマウスを用いて濾胞ヘルパーT細胞におけるS1PR2発現を詳細に解析すると共にSIPR2欠損時の細胞局在を解析したところ、S1PR2が胚中心濾胞ヘルパーT細胞に強く発現していること、またその細胞局在を制御していることが明らかになった。さらに、2光子顕微鏡を用いてS1PR2欠損胚中心濾胞ヘルパーT細胞の胚中心における挙動を解析したところ、S1PR2は胚中心濾胞ヘルパーT細胞が胚中心の中へ留まるのに重要であることが明らかになった。
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