研究課題/領域番号 |
11J05912
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
酒井 明人 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 四極子秩序 / 近藤効果 / 四極子近藤効果 / 非フェルミ液体 / 量子臨界点 |
研究概要 |
PrTr2Al20の単結晶の合成及びその純良化に成功し、低温物性の詳細な測定と解析により四極子秩序を持ち、混成の強い系であることを明らかにした。さらには遷移金属サイトをTiからVへ元素置換を行うことにより、混成がより強まり、低温で四極子と伝導電子の混成による異常な金属状態になっていることを明らかにした。この成果は論文として発表され、Editor's choiceに選ばれるなど高く評価された。混成が強まったことにより転移温度が下がったことは、四極子秩序の量子臨界点が存在する可能性を示唆し、超伝導の出現が期待される。またSmTr2Al20についても合成と物性測定を行い、遷移金属サイトをTiからV,Crと変えることで価数揺動が強まり、転移温度が抑制されることを明らかにした。この成果も論文としてまとめられ、注目を集めている。共同研究も特にPrTi_2Al_<20>でよく進んだ。μ-SRでは転移温度以下で内場がないことが示され、確かに四極子の転移であることが示された。超音波による弾性定数測定ではf電子間に強四極子相関が働いていることが示され、強四極子転移であることがわかった。 また光電子分光ではフェルミエネルギー近傍に明確な近藤共鳴ピークが観測され、f電子と伝導電子が混成していることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
炉の作成を終了し、それを用いて単結晶合成の純良化に成功した。また論文の執筆や学会発表を精力的に行った。その成果はEditor's choiceに選ばれたり、招待講演に招かれるなど高く評価された。したがっておおむね順調に進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
PrTi2Al20より強い混成効果により、四極子秩序温度が下がったことは量子臨界点が存在する可能性を示唆する。このような系で超伝導が表れるのかどうか、また圧力をかけることでそれがどのように変わるのかは全く未開拓の領域であり、本質的に重要である。今後はサンプルのさらなる純良下、圧力下での測定、新物質の探索などを通じて、四極子秩序の量子臨界点の可能性について研究をすすめる
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