今年度の研究の主な目的は、非常に明るい超新星の光度曲線の理論モデル作りを行い、そのモデルを通して非常に明るい超新星を非常に明るくする原因となっている星周物質の物理状況の制限を様々な超新星に対して行い、非常に明るい超新星周りの星周物質の多様性を探ることにあった。今年度はこの計画に沿い、まず非常に明るい超新星の理論モデル作りを行った。超新星を非常に明るくするほど高密度な星周物質中では、ショックブレイクアウトという現象が起こるであろうことに着目し、非常に明るい超新星の光度曲線とスペクトルの情報から簡単に非常に明るい超新星の周りの星周物質に制限を与えることが出来るモデルを提唱した。また、このモデルに基づいて得られる星周物質の物理量が実際にもとの非常に明るい超新星の観測量を再現できるかどうかを確かめるために、輻射流体力学の数値計算をモデルから予想された物理状況を初期条件にして行った。この計算により、先に得られたモデルから得られる値が確かに非常に明るい超新星の観測量を再現しており、モデルの正当性を確かめることが出来た。これにより、非常に明るい超新星の周りの星周物質の物理状況を時間のかかる数値計算を何度も行わなくてもある程度の予想ができることが分かり、今後の非常に明るい超新星の多様性を探る上で大きな進歩となった。さらに本研究の目的の一つである、すばる望遠鏡を用いた超新星サーベイの観測計画の立案も行った。既知の非常に明るい超新星のデータをもとに、非常に明るい超新星が初期宇宙に現れた際に現在計画されているすばる望遠鏡でのサーベイ観測でどの程度観測が可能なのかを確かめた。これにより、すばる望遠鏡でのサーベイで最大赤方偏移5(宇宙誕生後約10億年)の非常に明るい超新星が発見でき、初期宇宙の星形成史を探ることが可能であることを示した。
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