研究課題/領域番号 |
11J05971
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
守下 卓也 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | fine-motor manipulation task / 経頭蓋磁気刺激法 / 皮質間抑制回路 |
研究概要 |
本研究の主な目的は、経頭蓋磁気刺激法(transcranial magnetic stimulation : TMS)を用いて、複雑動作課題遂行時の皮質間抑制回路(interhemispheric inhibition : IHI)に調べることである。私の研究で用いている複雑動作は、箸を用いたガラス玉の反復把持移動動作課題(fine-motor manipulation task : FMtask)である。これまでの先行研究ではIHIについては安静時に多く焦点が向けられており、数少ない単純な随意収縮時の研究においてもはっきりしたことはわかっていない。今年度はこの手指を用いた複雑動作遂行時のIHIの動態を詳しく検討した。本研究で用いているFM taskは現実に即した運動課題であり、動作の位相などを規定することが不可能である。このような動作の位相を規定することが困難な課題はこれまでにあまり運動課題として用いられてこなかった。理由として、先行研究では動作を主として支配する対側の一次運動野の興奮性は、動作の位相に強く依存することが報告されており、この知見から同側の一次運動野の興奮性、脳梁を介した対側の一次運動野への信号伝達も動作の位相に強く依存すると考えられているためである。しかしながら、いくつかの先行研究ではこれらは動作の位相に依存しないことも示唆されている。今年度はこの脳梁を介した対側の一次運動野への信号伝達が動作の位相に依存しているかを検討した。2つの実験により脳梁を介した対側の一次運動野への信号伝達はおそらく動作の位相に依存していないという結果となった。この結果は現在私が行っている複雑動作課題遂行時のIHIを調べるにあたって、方法論的な観点からFM task遂行時にIHIは増大するという主な結果をサポートする形となった。この研究は国際誌Journal of Neurophysiologyに掲載が決定している。もうひとつは、このFM task遂行時のIHIの左右差について調べる研究も行った。結果は、非利き手を用いたFM task遂行時のみにIHIの増大を観察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
行った研究を国際誌に投稿し、査読者からのコメントにより追加実験が必要となった。しかしながら、この追加実験を行ったことによりこの研究の意義が増したと実感している。当社予定をしていなかった実験を行ったため、研究の受理が遅れたが実験はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は現在おおむね順調に進展している。現段階では研究計画の変更などについては考えていない。現在は今年度に行った研究を国際誌に投稿するための準備を主に進めている最中である。同時に、現在はFM taskを用いたトレーニングが、同側の一次運動野の興奮性や、IHI、皮質内の抑制回路にどのような変化、影響をもたらすかといったトレーニング実験の計画を立てている最中である。また、3年目に行う予定であるTMSを用いた3連発刺激の実験を行うための装置、機材の調達についても指導教官と相談していく。
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