研究課題
熱電変換技術の実用化には熱電変換効率の向上が第一の研究課題である。熱電変換効率を上げるための一つの手段として、ナノ構造の導入によるゼーベック係数の向上が検討されている。本研究では、シリコンの微細加工技術を利用して、電子の低次元系を実現し、ゼーベック係数に与える電子の閉じ込め効果を明らかにすることを目的とする。我々は、電子閉じ込め効果を観察するためには不純物バンドの影響を受けない試料に対してフェルミエネルギーを精度よく制御する必要があることを見出してきた。このような条件を満たすフェルミエネルギー制御用試料を設計・作製し、ゼーベック係数増大に対するナノ構造の有効性を実験的に示す。不純物バンドの影響を除去するために、外部電圧印加によりフェルミエネルギーを制御することを試みた。最初に、リファレンスとして、表面に電極を有するバルクサイズのSOI試料を作製し、外部電圧印加に対するSOI試料のゼーベック係数の変化を調べた。また、外部電圧印加時のシリコン中のキャリア分布もシミュレータを用いて計算し、得られた結果をPドープSOI試料のゼーベック係数と比較した。その結果、ゼーベック係数の絶対値が正電圧を印加することにより増加した。これは、電圧印加に伴うキャリア濃度の低下によるものと考えられ、PドープSOI試料のゼーベック係数のキャリア濃度依存性と定性的に一致した。従って、不純物バンドに影響されることなくゼーベック係数を制御できると考えられる。現在、ゼーベック係数に与える電子の閉じ込め効果を観察するために、ナノワイヤ状のSOI試料を作製している段階である。このシリコンナノワイヤ試料に対して、外部電圧を連続的に変化させることにより、ゼーベック係数のフェルミエネルギー依存性を細かく測定し、電子閉じ込め効果を明らかにする。また、外部電圧によるゼーベック係数の変化の物理的な解釈も進めている。
2: おおむね順調に進展している
外部電圧印加によるSOI試料のゼーベック係数について実験と理論計算の両面からアプローチした。その結果、不純物バンドに影響されることなくゼーベック係数を制御する可能性を見出した。また、ゼーベック係数の変化が単純にフェルミエネルギーの変動だけでは説明できないこともつきとめている。
ナノ構造を持つ試料を作製し、外部電圧印加によるフェルミエネルギーの制御することにより、ゼーベック係数に与える電子閉じ込め効果を明らかにする。また、ナノ構造の試料を測定するための新しい技術として電位分布をナノメートルオーダの空間分解能で測定できる走査型表面電位顕微鏡(KFM)用いたゼーベック係数の測定方法を確立する。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (15件) 備考 (1件)
IEICE Transactions on Electronics
巻: E95-C ページ: 924-927
10.1587/transele.E95.C.924
AIP Conference Proceedings of 9^<th> European Conference on Thermoelectrics
巻: 1449(印刷中)
Technical Report of IEICE
巻: VOL.111 ページ: 65-69
Japanese Journal of Applied Physics
巻: VOL.50 ページ: 06GF20-1-06GF20-4
10.1143/JJAP.50.06GF20
Journal of Electronic Materials
巻: VOL.40 ページ: 903-906
10.1007/s11664-010-1405-z
Advanced Materials Research
巻: VOL.222 ページ: 197-200
10.4028/www.scientific.net/AMR.222.197
巻: VOL.222 ページ: 66-69
10.4028/www.scientific.net/AMR.222.66
http://www.serversman.net/ikedalab/