研究課題/領域番号 |
11J06017
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
関 貴子 (荒内 貴子) 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | DNAシークエンス技術 / ヒトゲノム研究 / 倫理的法的社会的諸課題 / 第2世代シークエンサー |
研究概要 |
ヒトゲノム配列を高速かつ大量に読み解く機器である第2世代シークエンサーの登場によって、大規模なヒトゲノム研究が可能となった。これに伴い、従来の単一遺伝子の機能を解明する研究手法に加えて、多くの研究参加者の塩基配列を網羅的に解析する手法が可能となった。しかしながら、技術の発展経緯や研究現場に与えている影響は明らかになっていないので、主に文献調査を行い、昨年度行ったインタビュー調査と合わせてシークエンス技術の発展経緯とその研究現場への影響について検討した。また、技術の発展に伴い表出したヒトゲノム研究の倫理的法的社会的諸課題の抽出を行ってきた。その結果、シークエンス技術は開発当初から高速、簡単、正確であることが目指されたが、第2世代シークエンサーは、正確性よりも高速かつ大量に塩基配列を解読することを優先したことが明らかとなった。これにより、研究参加者個人への結果の返却あるいは研究成果の開示の際は、研究参加者に対しての情報提供を慎重に行われなければならず、不確実性は大きな課題だと考えられる。さらに、膨大な個人遺伝情報の漏えいやハッキング等の事故が発生する可能性があり、これらに関するインフォームド・コンセントの在り方は議論の必要があるとの指摘がある。以上を踏まえ、現在進行中の国際的なヒトゲノム研究プロジェクトの方針を比較し、どのような個人遺伝情報の取り扱い方をしているのか検討している。また、研究現場においては、情報科学の人材や設備が不足しているうえ、日本では、シークエンサーが全国に分散して導入されており、そのために各地で稼働状況に差が見られる。このような状況を解決するためには、諸外国のように技術や機器を集約することが考えられるが、日本においては、既に導入されたシークエンサーを活かすため、地方単位等の拠点を設立することが有効ではないかと考察している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
文献調査を深めるために多くの時間を費やし、交付申請書に記載した、シークエンス技術の発展経緯を明らかにするためのゲノム研究者やシークエンサーの開発企業へのインタビュー調査の進捗が芳しくないため。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題の対象となっているシークエンサーの著しい改良の過程を注視していくとともに、技術の発展経緯に関しての調査をより深めるため、文献調査を続けていく。同時に、今年度行えなかったゲノム研究者、およびシークエンサーの開発企業へのインタビュー調査を行う予定である。このほか、ヒトゲノム研究における個人遺伝情報の取り扱いに関する倫理的法的社会的諸課題の抽出を行っているが、今年度比較検討を行った4つのヒトゲノム研究プロジェクトの方針以外のプロジェクトに関しても、方針の確認及び比較を行い、どのような個人遺伝情報の取り扱いが妥当であるか、具体的な方策を考察したいと考えている。
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