研究課題/領域番号 |
11J06022
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
梁 永 京都大学, 工学研究科, 特別研究員DC1
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キーワード | レーザ / フォトニック結晶 / 面発光 / 2次元結合波理論 |
研究概要 |
本年度は、フォトニック結晶レーザの結晶構造と動作特性を明らかにするべく、フォトニック結晶レーザの解析と最適化設計を可能とする理論の構築を行った。フォトニック結晶レーザは共振器として2次元周期構造であるフォトニック結晶を利用している。従って、その動作特性(光出力)はフォトニック結晶の構造によって決まる。しかし、2次元フォトニック結晶構造には、格子点の形状、厚さ、厚み方向の形状、周期数、境界条件など多くの設計パラメータが存在する。このような設計パラメータとレーザ動作特性の関係を定量的かつ系統的に扱う理論は存在せず、新たな理論の構築が重要な課題である。このような背景のもと、申請者は、まず単一周期である正方格子フォトニック結晶に対して、Maxwell方程式から2次元フォトニック結晶中における光の固有電磁界モードを定式化し、フォトニック結晶面内における発振状態(2次元結合)と垂直方向の回折光(面発光)を定量的に計算できる2次元結合波方程式を導出した。この方程式によって、フォトニック結晶レーザの発振状態を明快に理解できると同時に、様々な結晶構造に対するレーザの動作特性(面発光成分の大きさ、閾値利得、出射ビームのパターンなど)を高速に解析できる。次に、構築した理論の妥当性を確かめるために、3次元のFDTD法による数値計算と実験との比較を行った。その結果、2次元結合波理論を用いることで、わずか1秒で一つの結晶構造に対する高速かつ信頼性の高い解析が実現できた。また、これまで説明できなかった実験結果もよく再現できた。この結果は、フォトニック結晶レーザの理論基盤を築くものであり、その重要性から米科学雑誌Physical Review Bにおいて公表されている。今後、本理論を異なる配列や周期をもつ構造に対して拡張することにより、ビーム出射方向制御可能なレーザの設計およびその高性能化にも大いに展開できるため、その意義は極めて大きい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり、フォトニック結晶レーザの動作特性を理解し、設計するための理論(2次元結合波理論)を構築した。FDTD計算や実験との比較によりモデルの妥当性と計算精度の確認を行った。今後は、2種類の異なる周期のフォトニック結晶を組み合わせたような構造にも本理論を拡張する。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、上記で確立した理論を拡張し、より複雑な結晶構造(三角格子や異周期複合結晶構造など)における2次元結合波理論を構築する。特に、二つの周期を組み合わせた異周期複合結晶については、格子配列、格子定数や相対的な結晶配置など、より多様な設計パタメータを考慮する必要がある。評価する共振器の動作特性としては、特に、自在なビーム出射方向制御の実現に必要な特性(ビーム出射角度、2本のビームの強度比、閾値など)を重点的に検討する。十分な理論展開をでき次第、ビーム出射方向を自在に制御可能なデバイスの設計方針を見いだすことを目指す。
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