研究課題/領域番号 |
11J06026
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡田 直幸 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 微小管 / 微小管結合タンパク質 / 細胞周期 / 局在制御機構 |
研究概要 |
私は分裂酵母を用い、間期と分裂期で局在を大きく変化させる微小管結合タンパク質Alp14/TOG(tumor overexpressed gene)およびAlp7/TACC(transforming acidic coiled-coil protein)の解析を行うことで、分裂期特異的なスピンドル微小管形成機構の解明を目指している。スピンドル微小管の形成・安定化に重要な相互作用タンパク質Alp14-Alp7がいかに分裂期特異的な核蓄積を達成しているのか、その局在制御機構の解明を研究の目的とした。 本年度の計画としてAlp14-Alp7の分裂期特異的な核蓄積を制御するドメインの探索とAlp7に見出されたリン酸化の意義の追究を掲げていた。そこでリン酸化キナーゼの探索を行うため、Alp7のin vitroにおけるキナーゼアッセイを行った。この結果in vitroにおけるAlp7のリン酸化を担う分裂期キナーゼとしてCDK(サイクリン依存性キナーゼ)およびPlo1(ポロキナーゼ)を特定した。続いてin vivoにおける表現型を観察するため、Alp7に存在するCDK,Plo1のコンセンサス配列のセリン、スレオニン残基をそれぞれアラニンに置換した非リン酸化型変異体を作製した。このうちAlp7に存在するPlo1の8個のコンセンサスサイトをアラニンに置換したAlp7-8A変異体では、体細胞分裂においては温度感受性や局在について野生型と異なる表現型は観察されていないが、減数分裂前期において動原体上へのAlp7の局在が低下すると現在考えている。一方、CDKのコンセンサスサイトをアラニンに置換した変異体の1つで強い温度感受性が見出され、分裂期特異的なAlp7の核蓄積およびスピンドル微小管局在の顕著な低下が観察された。現在、この変異体が輸送制御の変異体であるのか確認を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目標の1つとして掲げたAlp7のリン酸化の解析について、CDKおよびPlo1といった分裂期キナーゼがAlp7をリン酸化していることが明らかになりつつある。Alp7タンパク質の中で、in vivoにおける輸送に重要なアミノ酸残基を限定しつつあることも考えれば、研究はおおむね順調に進展していると評価を下せる。
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今後の研究の推進方策 |
Alp7のCDKコンセンサスサイトの変異体の解析を行う。観察されたAlp7変異タンパク質の顕著な分裂期スピンドル微小管局在の低下が輸送に起因するものであるのか解析する。具体的には核移行シグナルを融合したタンパク質を作製して温度感受性が抑制できるか確認する。その結果、輸送制御に関わる変異体であれば恒常リン酸化型変異を導入して解析を行う。またAlp7とAlp14が相互作用するタンパク質であることに留意し、Alp14についても同様にキナーゼアッセイを行い分裂期キナーゼによるリン酸化、およびリン酸化による局在制御の可能性を探索する。これと同時にAlp14のCDKコンセンサスサイトの点突然変異体の表現型も観察していく予定である。
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