研究課題/領域番号 |
11J06042
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
三浦 恭子 慶應義塾大学, 医学部, 特別研究員(SPD)
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キーワード | ハダカデバネズミ / 真社会性 / 癌化耐性 / 長寿 / naked mole rat / heterocephalus glabe |
研究概要 |
ハダカデバネズミ飼育室を慶應大医学部内に新設し導入を完了した。引越の環境変化ストレスによるネズミの死亡(1割)と繁殖停止という予想外の事態に見舞われたものの、その後飼育方法・繁殖方法の改善効果が認められ、無事個体数が増えつつある。H23年度は、まず、in vitroでの神経細胞調整を目的としてハダカデバネズミiPS細胞の樹立を行い、これに成功した(投稿準備中)。また、ハダカデバネズミのカースト変化時の脳のMRI解析のための下準備として、実験動物中央研究所との共同研究にて脳のMRIアトラスの作成を行った(投稿準備中)。ハダカデバネズミ遺伝子配列情報が整備されていなかったため、慶應大医学部分子生物学教室/理工学部バイオインフォマティクス教室との共同研究にて、次世代シーケンサーによるハダカデバネズミ全mRNA配列決定を行い、独自のゲノムアセンブリ結果と組み合わせ、発現情報を併せ持つハダカデバネズミゲノムブラウザを新規に立ち上げた(投稿準備中)。ハダカデバネズミはマウスとほぼ同じ大きさでありながら、その高度な社会性に加えて、異例の長寿命(平均28年)とがん化耐性という特徴を有する。ハダカデバネズミの老化耐性・がん化耐性を規定する遺伝子群の同定に向け、一次スクリーニングとして、ハダカデバネズミ(naked mole rat:NMR)特異的発現遺伝子群NMAT(NMR-associated transcripts)の同定を進めている。mRNAシーケンスデータから組織別発現遺伝子リストの作成を行い、ヒト/マウスの組織別発現遺伝子の情報を組み合わせた独自のNMAT抽出パイプラインを構築した(投稿準備中)。現在、抗老化への関与が考えられる遺伝子候補を得ることが出来ており、さらなる候補の選定と、解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究を開始した時点でハダカデバネズミの研究情報はほとんど存在していなかったが、本年度において、(1)飼育/繁殖設備・方法の整備の完了、(2)神経系を含む様々な研究へ用いることが出来るiPS細胞の樹立、(3)脳MRIアトラスの作成、(4)遺伝子配列情報の整備、発現解析のパイプラインの構築を完了することが出来た。これにより、ハダカデバネズミの神経分子生物学的解析を本格的に稼働させることが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
・飼育/繁殖法を大きく改善し、個体数が増加しつつある。H24年度はさらなる個体数の増加が見込まれているため、脳の解剖学/組織学的解析を開始できる見込みである。 ・脳のカースト差を規定する因子の同定については、組織学的解析、MRIデータの比較に加えて、次世代シーケンサーによる遺伝子発現差解析が非常に有効な手段であると考えられる。そこで、次世代シーケンサーによるハダカデバネズミ遺伝子発現差同定パイプラインのさらなる整備を進め、検出精度のさらなる上昇を目指す。 ・本年度、遺伝子配列情報からハダカデバネズミの抗老化への関与が考えられる遺伝子候補を同定できたため、さらなる候補スクリーニングと機能解析を進める。
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