研究概要 |
高性能かつ低消費電力なCMOSデバイスの実現に向け、金属/希土類系高誘電率(high-k)ゲート絶縁膜/歪ゲルマニウム(Ge)ゲートスタック構造が着目されている。High-k絶縁膜/歪Ge界面においては、界面反応抑制および歪に与える影響の低減のため、低温での膜形成プロセスが重要である。一方、低温での希土類酸化膜や金属膜の形成プロセスが、希土類材料物性および材料界面特性に与える影響の理解は十分ではない。本研究では、高誘電率かつ低リーク電流の両立が期待されるプラセオジム(Pr)酸化膜の物性制御、および、金属/希土類酸化膜/半導体積層構造における異種材料界面構造制御を目指した。 有機金属化学気相堆積法による300℃での低温希土類酸化膜形成では、膜形成時の酸化剤分圧が、希土類材料の価数制御に有効であることを見出した。酸化剤分圧の低減により、4価と比較して3価のPr酸化膜の割合が増大し、誘電率の増大が実証された。GeもしくはSi上にPr酸化膜を堆積したところ、Pr酸化膜中および表面への半導体材料の拡散が見られた。絶縁膜中へのIV族材料の添加は酸化膜の結晶構造変化を導き、高誘電率六方晶Pr_2O_3の形成には、半導体材料の拡散の抑制が重要であることが明らかとなった。 High-k絶縁膜/Ge上への金属膜形成の影響を調べたところ、還元性の高い金属(Al,W)を形成した試料ではGe酸化物量が減少し、一方、還元性の低いAuやPtの場合では増大した。これらの金属種による違いは、金属酸化物形成の熱力学的安定性により説明可能であり、還元性の高い金属膜にはPr酸化膜/Ge構造内の酸素が供給されたと考えられる。酸素拡散に伴い低酸素分圧状態のPr酸化膜/Ge界面では、Ge酸化物の還元反応が支配的となる。そのため、Alを電極に用いた試料においては、Au電極試料と比較して、界面準位密度の増大が認められた。
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