黄色ブドウ球菌がヘム取り込みをする際に用いる、Isdシステムの鉄輸送機構を解析した。Isdシステムを構成する蛋白質IsdCからIsdEへのヘム輸送機構を解析した。IsdCとIsdEの親和性を等温滴定型熱量測定法によって測定したところ、IsdCとIsdEは非常に弱い親和性で相互作用していた。その相互作用様式を、フォトクロスリンク法によって解析した結果、IsdCとIsdEは互いのヘム結合部位を近づけて相互作用していた。また、IsdCはIsdEのみではなく、IsdC同士でもヘムを輸送することがわかった。その際、IsdC同士が互いのヘム結合部位を近づけるようにして相互作用していた。 黄色ブドウ球菌は抗生物質耐性を容易に獲得する性質があり、現在までにほとんどの抗生物質に耐性を持つ株が報告されている。そのため、黄色ブドウ球菌への新規な抗生物質の開発は急務となっている。Isdシステムは黄色ブドウ球菌の生育に必須であり、そのヘム輸送機構を解明した本研究は非常に意義深いといえる。IsdC、IsdEのヘム結合部位周辺が機能していることから、ヘム結合部位に結合する小分子の発見がIsdシステムの機能阻害、ひいては黄色ブドウ球菌の生育阻害につながることが示唆される。また、Isdシステムは黄色ブドウ球菌のみではなく、グラム陽性細菌に広く保存されていることが知られており、本研究成果は汎用的な抗生物質の開発につながることが示唆される。
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