研究概要 |
本研究の目的は,超大自由度あるいは第変形可能な連続体的な性質をロボットの機構に積極的に取り入れるソフト・コンティニュアム・ウェットロボティクスの創成である.平成23年度には,(1)明示的な関節を持たない,連続体的な材質により構成される超多自由度の柔らかいロボット実機の作威を目指して研究を行なってきた.この目標に関して平成23年度は特に,非常に安価な力センサの試作を行った.この方法を採用するまでに至る試行錯誤を通じて,試作した力センサと同様のメカニズムを連続体的な材質のセンシングに拡張するための知見を得た.その他の駆動部や機構系の設計に関しては,東日本大震災に伴う(交付額の減額変更を行う可能性を考慮した)研究費の一部差し止めと,当研究室の設備的な側面から遅延を余儀なくされたため,当初平成24年度に取り組むはずであった(2)柔らかさをモータ制御系の一部として制御する結合振動子系(制御器)の開発に関して本年度に集中的に行なった.この目標に関しては革新的な研究成果を得ることができたと確信している.ここから得られた知見は,非常にシンプルな位相振動子であっても身体の柔らかを制御系に組み込むことで,制御系のパラメータを全く変えること無く多様な振動パターンを発生させることが可能であり,かつそれらの間で遷移をも創発させることが出来るというものである.この研究成果は,生物が持つ探索と活用が潭然一体であるような振る舞い生成の発現原理を理解するための大きな一歩といえる.この多様な振動パターンの発現と遷移メカニズムの解明は,受け入れ研究室である小林研の伊藤賢太郎助教と数理の面からの解明を試みており,これが明らかになれば粘菌様ロボットのみならず,ヘビロボットや脚ロボットへの応用も可能であると考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では,マイルストーンとして(1)明示的な関節を持たない,連続体的な材質により構成される超多自由度の柔らかいロボット実機の作成,(2)柔らかさをモータ制御系の一部として制御する結合振動子系(制御器)の開発に,(3)「点」ではなく「面」で外界とインタラクションすることで,アクティブセンシングを時空間的に展開し,リッチなセンサ情報を収得,の3つの目標を掲げている。平成23年度は当初,(1)に集中的に取り組む予定であったが,東日本大震災に伴う(交付額の減額変更を行う可能性を考慮した)研究費の一部差し止めと,当研究室の設備的な側面から,センサの開発のみにとどめ(2)の目標に集中的に取り組んだ.この研究成果は,自律的に「適応的な振る舞いの多様性」を獲得できるロボットの設計論という観点からも,また現実世界に開かれた数理モデルの構築という側面からも,革新的な研究成果を得ることができたと確信している.
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今後の研究の推進方策 |
今後は(1)明示的な関節を持たない,連続体的な材質により構成される超多自由度の柔らかいロボット実機の作成という目標を達成するために,「小型で安価なアクチュエータである新可変弾性要素の開発と,その制御方法の確立」「連続体的な材質の造形ならびその形状のなどの設計」に精力的に取組み,本年度の研究成果である「柔らかさをモータ制御系の一部として制御する結合振動子系」と組み合わせることで,ソフト・コンティニュアム・ウェットロボティクスの創成を目指す.
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