研究概要 |
本研究の目的は,超大自由度あるいは大変形可能な連続体的な材質をロボットの機構に積極的に取り入れるソフト・コンティニュアム・ウェットロボティクスの創成である.平成24年度には,「(1)明示的な関節を持たない,連続体的な材質により構成される超多自由度の柔らかいロボット実機の作成」という目標を達成するために,小型,軽量,安価なひも状のアクチュエータである形状記憶合金(SMA : Shape Memory Array}をやわらかく連続体的な材質に如何に組込み,その変形を如何に制御するか,という課題に対し精力的に取組んできた.本年度は,まずアクチュエータ2本という少数自由度で,柔らかい素材の変形パターンをどのように制御できるかを試した.具体的には梁状の板にアクチュエータをオーバーラップするように配置し,それらの駆動タイミング(位相差)を少しずつずらすことで,その梁の変形パターンの変化を調べた.おどろくべきことに,制御値は位相差を少しずつ大きくしていくと,その梁状のソフトロボットの振る舞いは尺取虫運動から這行運動に遷移することが確認された.このロボットに実装されているアクチュエータは2個と少数自由度であるにもかかわらず,ロボットのボディの変形パターンが接地摩擦制御機構として働き,尺取虫運動や這行運動で前後に移動することができる.さらに興味深いことに,このロボットを狭窄空間で駆動させると,圧縮波を後部から全部に送ることによって前進し続けることができる.これらの実験は,3次元的な大変形や粘弾性を制御系に組み込むことでロボットの適応的運動機能が向上することを示唆しており非常に興味深い.この研究成果はロボティクスでは著名な国際学会であるIEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and System (IROS2013)に投稿した.今後は,さらに多数のアクチュエータの配置方法によりどのような変形や運動パターンが生み出せるかを詳しく調べる.さらに,昨年度の研究成果をロボットに組込み,多様な振る舞いが可能な適応的なソフトロボットの設計論を確立させる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,マイルストーンとして(1)明示的な関節を持たない,連続体的な材質により構成される超多自由度の柔らかいロボット実機の作成,(2)柔らかさをモータ制御系の一部として制御する結合振動子系(制御器}の開発に,(3)「点」ではなく「面」で外界とインタラクションすることで,アクティブセンシングを時空間的に展開し,リッチなセンサ情報を取得,の3つの目標を掲げている.(2)は昨年度に,(1)は本年度に行なった.残り1年で(1)と(2)を組み合わせた(3)を行う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は「(3)「点」ではなく「面」で外界とインタラクションすることで,アクティブセンシングを時空間的に展開し,リッチなセンサ情報を取得」を実現するために引き続き精力的に研究活動を行う.今後の研究では,少数もしくは多数のさまざまなアクチュエータの配置でソフトなボディを作り,まず位相制御のみでどれだけ多様な振る舞いが出せるかを試す.さらに,そのボディに曲げセンサなどを組込み,各自律個が柔らかなボディの連続性・粘弾性を介して相互作用し振る舞いを自己組織化的に発現するロボットを作成する.この試行錯誤の中で,どのようなセンサ情報が柔らかなボディから所得可能かを検証し柔らかなボディを介したアクティブセンシングの知見を蓄積する.
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