研究課題/領域番号 |
11J06135
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
青木 一勝 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | 構造浸食 / 高圧変成岩 / ジルコン / U-Pb年代 |
研究概要 |
白亜紀に起きた構造浸食プロセスについて読み取ることを目的として、当時の造山運動の各種構成地質体の配列関係が残っている三波川造山帯と四万十造山帯の構成地質体から分離した砕屑性ジルコンの年代頻度分布を比較・検討した。その結果、三波川変成岩および四万十変成岩のみに、ca.1000-2000Maという特徴的な年代のピークが観察されることが分かった。この1000-2000Maに卓越したピークは、南・北中国地塊間の衝突帯からの大量の削剥物質が海溝にもたらされた結果と考えられてきたが、一方で白亜紀前期の造山運動時に前弧域で堆積した砂岩のジルコン年代頻度分布は、(1)南北中国地塊由来の削剥物質がほとんど供給されていなかったこと、(2)後背地には、ca.80-300Maの形成年代を持つ花崗岩バソリス帯が卓越していたことを示している。従って、三波川変成岩および四万十変成岩がもつ1000-2000Maの卓越したピークについては、従来とは異なる地質学的説明が必要であることが分かった。 本研究結果とこれまでの研究報告を組み合わせると、おそらく三波川造山運動時に上盤側にあったジュラ紀付加体が下底から構造浸食を被り、その物質が沈み込み帯深部で高圧変成作用を受けて1000-2000Maの卓越したピークをもつ三波川変成岩となったと考えられる。 一方、四万十変成岩についても同様に説明され、四万十造山運動初期に大規模な構造浸食が起き、もともと三波川変成岩あるいは三宝山付加体であった物質が沈み込み帯深部で変成作用を受け1000-2000Maのピークをもつ四万十変成岩ができたと考えられる。ただし80Ma以降の原岩については、1000-2000Maのピークが不明瞭になる。おそらくイザナギ-クラ海嶺沈み込みと関係して、古い付加体の大規模構造浸食が進み、リサイクルする物質がきた結果と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
分析装置の故障やマシンタイムの制約により、研究試料の分析結果を得る時期が、当初の予定よりもやや遅れたため。
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今後の研究の推進方策 |
他機関で分析する場合は、分析装置の状態を確認した上で、分析の予定を組み、装置の状態が悪い、もしくはマシンタイムが混んでいる場合は、他機関に頼らずに分析・解析することができる手法を適宜遂行し、研究に遅れが生じないよう努める。
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