研究課題
白亜紀の東アジア大陸縁辺部で発達した西南日本の弧-海溝系における陸源性砕屑物の供給パタンの変化を解読することを目的として、三波川造山帯と四万十造山帯の各要素に含まれる砂質岩から分離した砕屑性ジルコンのU-Pb年代頻度分布を比較・検討した。白亜紀前期三波川造山帯:当時の弧内堆積体(豊西層群)、付加体(三宝山帯)および前孤海盆堆積体(領石-物部川層群)のジルコン年代頻度分布を比較すると、どの地質体にも、ca.90-350Maの間の共通のピークが認められるが、弧内堆積体にのみ、約1500-2500Maの特徴的な年代が卓越したスペクトルが観察されることが分かった。この観測事実は、(1)原生代の地質体由来の削剥物質が背弧側には供給されていたが、前弧域にほとんど供給されていなかったこと(2)前弧域には、ca.90-350Maの間に出来た比較的若い弧地殻物質がもたらされていたことを示す。これまでに明らかにされている日本列島周辺の地質構造史を参照すると、約1500-2500Maジルコンはトリアス紀に接合した南・北中国地塊の先カンブリア基盤岩およびジュラ紀付加体から由来したと考えられる。以上の結果を踏まえると、白亜紀日本の前弧域では、ほぼ直前の時期に出来た弧バソリス域からの砕屑物が主に供給され、原生代の大陸由来の砕屑物がほとんど供給されていなかったことを示す。一方で、背弧側には、原生代の大陸由来の砕屑物が確実に届いていたことから、白亜紀の造山運動により形成された花崗岩バソリス帯(領家-山陽帯や山陰帯)は巨大なバリアとして、原生代の大陸由来の砕屑物質の前弧域への流入を遮断していたと考えられる。このことから同時代の造山帯砂岩であっても、砕屑性ジルコン年代分布が、弧を境に背弧側と前弧側で大きく異なるという例が示された。
2: おおむね順調に進展している
分析に必要なマシンタイムを確保することができ、研究に必要なデータが順調に得られた。他研究機関所有の装置で分析する場合、装置のトラブルなどで、十分なデータが予定通り得られない場合がある。
そのような事態になった場合を想定し、装置が復旧する間、装置に依存せず行える研究を即座に遂行出来るよう準備をしておくように努める。
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Geology
巻: 40 ページ: 1087-1090
doi:10.1130/G33414.1