研究課題/領域番号 |
11J06148
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
古川 尚子 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 宇宙線加速 / ガンマ線 / 分子雲 / HIガス / 超新星残骸 / 大規模星団 |
研究概要 |
1.超新星残骸周囲の分子雲・HIガスとガンマ線の比較 前年度からの継続で、TeVガンマ線超新星残骸(SNR)RCW86に注目した。今年度は、X線データと星間ガス(分子雲と原子ガス)を比較し、星間ガスの少ないシェル北東部では非熱的X線が強く、星間ガスの存在する東側や西側では熱的X線の強度が強いという関係を明らかにした。これは、星間ガスの存在する場所では、SNRの衝撃波が星間物質と衝突して逆方向の衝撃波が発生し、掃き寄せられたガスが加熱されるために熱的X線が放射される一方、星間物質が無い場所では衝撃波が減速されず、宇宙線電子による非熱的シンクロトンX線が放射されるという解釈に矛盾無い。本研究は、これまで高エネルギーガスからの放射のみでしか捉えられてこなかったSNRに対し、周囲の冷たいガスとの物理的関係を明らかにすることがSNRを理解するうえで重要である事を示した一例となり、日本物理学会と日本天文学会で発表した。 2.非等方的超新星爆発によるアーク・ジェット分子雲形成の検証 今年度は、これまでに得られた分子雲のデータをより詳細に解析し、アークの中にもジェット軸に沿った直線状の構造が存在する事を明らかにした。ジェットの逆側にも直線状分子雲が発見されたという事は、我々の提案している非等方的超新星爆発などの双極的ジェット現象による分子雲の形成シナリオを支持する結果となる。また、本研究でもう一つ重要な課題である、同方向にある高エネルギーガンマ線の放射起源を特定するためにも、ガンマ線源とアーク・ジェット、星団Westerlund 2の物理的付随関係を明らかにする必要であるが、我々はアーク・ジェット分子雲の持つ視線速度から距離を7.5kpcと推定し、アーク・ジェット分子雲は星団と異なる距離にある可能性を示した。これにより、ガンマ線源がどちらに付随しているかによって、今後、ガンマ線放射起源を特定できる可能性がある。本成果を論文にまとめ、2月にAstrophysical Journalへ投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に沿って、研究1においては、これまでの成果を日本物理学会と日本天文学会で発表し、研究2においては、これまでの成果を論文にまとめ、Astrophysical Journa1へ投稿したため。
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今後の研究の推進方策 |
研究1のRCW86においては、現在のガンマ線望遠鏡よりも分解能をあげなければ、先にハドロン起源が示唆されたRXJ1713.5-3946の例(Fukui et al.2012)と同等の空間分解能で星間ガスとガンマ線放射の相関を見ることはできない。また、研究2において、星団Westerlund2方向の高エネルギーガンマ線の放射起源を特定するためには、さらに高分解能・高感度のガンマ線観測によって、放射源の分布を分解し、弱い放射も検出する必要がある。したがって、両研究において、CTAなどの次世代ガンマ線望遠鏡が稼働すれば、観測を提案する予定である。
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