研究課題/領域番号 |
11J06231
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
菅野 菜々子 首都大学東京, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 非分裂条件 / 栄養源飢餓生残 / 光合成細菌 / 代謝動態 / 遺伝子発現 / メタボローム / 細胞膜脂肪酸組成 |
研究概要 |
【研究目的】細菌は生態系の中で分解者・生産者という重要な役割を担っている。自然環境では栄養資源の量が変動するため、細菌は栄養源が少ない期間は分裂せずに生きのびていると考えられる。本研究では細菌の非分裂条件下での生存機構をエネルギー(ATP)との関係から明らかにするために、光からATPを獲得できる光合成細菌を利用して、非分裂条件下でATPを消費している生理活性とATP維持に関わる細胞状態を特定する。 【平成24年度研究計画】平成23年度までの研究で、紅色光合成細菌5種の中でRhodopseudomonas palustrisの生存性が最も高いことがわかっている。24年度は生存性の高いR.palustrisを使用して、 (1)非分裂条件下でATP供給があるときに維持されている生理状態の特定、 (2)非分裂条件下での生存性に関与する遺伝子の探索を行った。 【平成24年度研究成果】 (1)代謝産物を約100種類分析したところ、光照射によるATP供給のある細胞とATP供給のない暗条件の細胞間で大きな違いがあることがわかった。エネルギー利用に関係する代謝が大きな影響を受けており、暗条件ではエネルギー不足から代謝機能が低下していることが示唆された。また、細胞膜構造に注目したところ飽和脂肪酸量の比率の変化により生存性の高い細胞の膜は流動性が低下している可能性が考えられた。 (2)定量PCR法により、m-RNAの遺伝子発現解析を6遺伝子について行ったところ、光照射により生存性の高い細胞と暗条件にある生存性の低い細胞では遺伝子発現量に最大で数十倍の違いがあることがわかった。 一方、発現量にあまり違いのない遺伝子もあることがわかった。来年度はマイクロアレイを用いて網羅的遺伝子発現解析を行う予定であり、生存性による遺伝子群転写パターンを明らかにできると期待される。R.palustris専用のマイクロアレイは今年度中に作成済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度に予定していた、(1)生理状態解析、(2)遺伝子解析両者において成果を得ることができた。予定していた実験のすべては実行しなかったが、研究目的である生存性とエネルギー利用との関係に直接関係する新しい知見を得ることができた。また、遺伝子発現解析では生存性により遺伝子群の発現パターンが大きく異なる可能性が示唆され、生存性を維持するための遺伝子発現パターンを解明できる可能性が高まった。以上から、当初の計画以上に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、(1)生存性に関与する遺伝子発現パターンを解析し、非分裂条件下での生理状態との関係を明らかにする、(2)これまでの成果を論文にまとめる。 (1)これまでの研究から、R. palustrisの非分裂条件下での遺伝子発現パターンは、今回調べた6遺伝子に限らず、生存性により遺伝子群全体の発現パターンが大きく異なっている可能性が示唆された。また、生存性により代謝や細胞膜組成が異なることも分かっているので、次年度は代謝系・細胞膜維持機構に関与する遺伝子に注目して、非分裂条件下での網羅的転写解析を行い、生存性に関与する遺伝子発現パターンを解析する。
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