研究課題/領域番号 |
11J06260
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田尻 怜子 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | 昆虫クチクラ / クチクラタンパク質 / 形態 |
研究概要 |
本研究の目的は、昆虫の外骨格(クチクラ)形態を司ると考えられている多数のクチクラ構成タンパク質について、生体内での個々の機能を明らかにすることである。キイロショウジョウバエを材料として研究を進めている。 平成23年度には、各遺伝子の機能の基礎的理解を得るために、ショウジョウバエ生体において個々の遺伝子の発現を阻害した場合に成虫のクチクラに生じる異常の解析を行った。具体的な実施状況は以下の通りである。 (A)RNAiを用いた遺伝子発現阻害による解析 RNAi系統の2種類の公開ライブラリー(国立遺伝学研究所とVienna Drosophila RNAi Centerに、独立したライブラリーが存在)から取り寄せた系統を用いて、計101遺伝子についてRNAiによる発現阻害実験を完了した。うち約3割の遺伝子についてクチクラの形態異常が確認された。 そのうち約1/3の遺伝子については、2種類のRNAiライブラリーによる表現型が一致しなかった。これはRNAi特有のoff-target効果(目的の遺伝子のみならず、類似した配列を持つ他の遺伝子も同時に阻害される効果)等による非特異的影響と考えられた。この影響を排除するため、各遺伝子の機能欠損変異体を入手または作製してその表現型を調べることにした。 (B)機能欠損変異体による解析 クチクラタンパク質遺伝子の約3割について機能欠損変異体と考えられる系統(染色体の欠損やコード領域へのトランスポゾン挿入など)が存在する。これらを入手して表現型の解析を進めた結果、幼虫・蛹の体表を覆うクチクラの形態に異常を示すもの、成虫肢の関節のクチクラ形態に異常を示すものなど、クチクラ形態の顕著な異常が多く観察された。 以上のように、ショウジョウバエ生体の外骨格(クチクラ)形態の制御に個々のクチクラ構成タンパク質が必須の役割を果たすことを示した。この一群のタンパク質についてこれまでほとんど分かっていなかった、生体内での機能を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ショウジョウバエRNAi系統の公開ライブラリーから入手可能な系統の大部分について発現阻害実験を完了した。RNAi特有のoff-target効果等による非特異的影響は、当初の計画における想定(先行研究にもとづいた想定)より大きかったが、機能欠損変異体の入手によりこの問題を乗り越えることができた。総じて、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の通りに研究を進める。すなわち、これまでにクチクラ形態の顕著な異常が見出された変異体について、原因遺伝子の強制発現がクチクラ形態に及ぼす作用を解析する。変異体における形態異常が強制発現によってレスキューされるか確認する。続いて、GFP等の標識の付加によって、タンパク質産物の局在を解析する。
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