研究実績の概要 |
本研究では、昆虫の外骨格(クチクラ)の形態を司ると考えられている多数のクチクラ構成タンパク質について、生体内での個々の機能を明らかにすることを目指した。キイロショウジョウバエを材料として研究を進めた。
前年度(平成25年度)までにCG11142とCG2560が幼虫・蛹の体表を覆うクチクラの形態制御に重要な役割を果たすクチクラタンパク質を見出し、CG11142のノックアウト変異体の作製に成功した。今年度はこのノックアウト系統の表現型の詳細な解析を進めた。その結果、CG11142が蛹のクチクラの形態制御だけではなく、幼虫の後腸の正常な形態・機能の維持にも必要であることを見出した。CG11142ノックアウト系統では、孵化直後の幼虫の後腸が体外に突出し(脱腸)、100%の個体がこの時期に死に至った。CG11142タンパク質には2種類のスプライスバリアントが存在する。変異体個体において各バリアントを強制発現させるレスキュー実験によって、一方のバリアントが蛹のクチクラ形態の制御を担い、もう一方のバリアントが主に幼虫の後腸の形態・機能の維持に必要であることを見出した。
また、CG11142, CG2560両タンパク質の生体内における発現・局在を正確に調べるために、各タンパク質のC末端に蛍光タンパク質を融合させた形の発現コンストラクトを持つトランスジェニック系統を得た。さまざまな発生ステージにおける蛍光シグナルを観察したところ、各遺伝子の変異体の表現型と一致する発現・局在が確認された。
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