研究課題/領域番号 |
11J06289
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
前田 順平 首都大学東京, 理工学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | ニュートリノ / ニュートリノ振動 / 原子炉 / 素粒子 / Double Chooz / θ13 / フランス / 国際情報交換 |
研究概要 |
この研究はDouble Chooz実験でもともと予定されているガドリニウム原子による中性子捕獲事象ではなく、水素原子による中性子捕獲事象を用いたニュートリノ信号の同定、及びニュートリノ振動角θ_<13>の測定である。研究計画申請時にはすでに物理データの取得が始まっていることが見込まれており、解析にすぐに専念できる予定であったが、実際に4月の開始時にはまだ物理データ取得が開始されていなかった。従ってまずは次世代原子炉ニュートリノ振動実験Double Choozの物理データ収集の開始に尽力した。現場責任者としてデータ開始取得を成功させたのち、順調にデータの統計を稼いでいった。また夏にはエネルギーキャリブレーションのためのデータを取得した。その後まずは実験として計画されていた中性子がGd原子に捕獲される事象の解析に専念した。この知識と得られる経験は研究計画である陽子捕獲にも役立たせることができる。11月にはGd原子事象を用いた場合に短い距離でのニュートリノ振動の兆候を世界で初めて検出し、 sin^22θ_<13>=0.086±0.041(stat.)±0.030(syst.) と測定した。申請者はこの結果を2012年2月に行われた国際会議で発表している。またPhysical Review Letters 108(2012)131801に掲載された。その直後から実際の申請課題である陽子による中性子捕獲事象の解析を始めた。この解析に賛同してくれる数名の海外の研究者と共に議論を重ねながら解析を行っている。2011年度はエネルギー再構成、事象選別の最適化に力を注いだ。またバックグラウンドの見積もりに対してもすでに始めており、2012年度中には陽子捕獲事象の場合のバックグラウンドとその不定性を見積もる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では研究開始時にはすでにデータ取得が始まっており解析に専念する予定であったが、実際にデータ取得開始させるための研究に時間を割いた。その後はこの研究内容に賛同してくれる研究者が現れ、当初の思惑以上の進捗を見せており、その結果申請書通りの研究が行えている。
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今後の研究の推進方策 |
陽子による中性子捕獲事象特有の不定性である位置再構成の精度、中性子捕獲効率、及びバックグラウンドの正確な見積もりに重点を置く。バックグラウンドの見積もりはこの事象特有の方法が必要である可能性があり、それらの手法の開発に時間を当てる。最終的にこれらの不定性は系統誤差として算出していき、その後振動解析を行う。最終的には現在のDouble Chooz実験や他の実験と結果を比較していく。
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