研究課題/領域番号 |
11J06299
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田辺 博士 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | プラズマ診断 / 非接触計測 / ドップラー計測 / イオン温度 / プラズマ流 / 逆問題 / コンピュータトモグラフィ / 磁気リコネクション |
研究概要 |
プラズマから放射される可視光線スペクトルがドップラー効果を受けて波長シフトすることを利用して、プラズマの熱運動や流れを線スペクトルのドップラー幅・バルクシフトから調べる手法であるドップラー分光計測にコンピュータトモグラフィを応用し、プラズマ内部の局所イオン温度・流速分布計測を目指す本計画の実施に先立ち、研究初年度となる平成23年度はシステム構築に必要なハードウェア・ソフトウェア環境の整備を行うとともに、前年度(22年度)の2次元ドップラー計測システム立ち上げ成果のまとめ(Rev.Sci.Instrum誌への投稿[査読中])および、磁気リコネクション室内実験への応用を行った(論文[1]~[3],発表[1]~[5])。ドップラー分光計測は、実験室プラズマに限らず、宇宙プラズマから核融合プラズマまで幅広いスケールのプラズマを非接触で診断できる反面、受動計測であるが故に、その計測信号は視線方向の全ての発光の重ね合わせとなってしまう問題がある。特にレーザを入射して局所的にプラズマを光らせるLIF法が難しい完全電離プラズマを対象とした核融合プラズマでは、確かな局所計測は中性粒子ビームを用いたCXRS法に限られるが、ビームが計測専用に作られることがない限りその計測領域は通常磁気軸外側の限られた位置の一次元計測となっているのが現状であり、ビームに左右されずプラズマ全体をカバーできる経済的な局所計測はいまだ不在の状況にある。実際、英国カラム研究所が有する世界最大の球状トカマク合体実験装置MASTは、2基のビームを有しながら、合体中のプラズマのコア領域のイオン温度・流速計測が実現できておらず、我々の手法はおおいに注目を受けることとなり24年度に共同実験を実施することが確定した。以上のように、本計画は現在、東大学内における新手法開拓および、大型実験における実証の二本立てで進行している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究初年度となる平成23年度は新しいトモグラフィシステム開発のための、ハードウェア・ソフトウェア環境の整備および、22年度に開発済みのシステムを応用したTS-3/4装置における磁気リコネクション室内実験での成果程度を想定していたが、さらなる成果として英国カラム研究所との共同実験を軌道に乗せ、世界最大の球状トカマク実験装置MASTにおいて合体中のイオン温度診断手法として我々の手法を採用させるProposalを通すことに成功したことは特筆に値し、当初の計画以上の進展といえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、トーラスプラズマ合体実験装置TS-3/4装置におけるベクトルトモグラフィを用いたポロイダル流速計測システム立ち上げにおいて最も重要な集光レンズ系の整備を開始するとともに、英国カラム研究所との共同実験としてMAST装置の計測系へのトモグラフィシステム導入を開始する。そして両装置共通の物理現象である磁気リコネクションに関し、TS-3/4装置では磁気エネルギーが熱化されるまでのエネルギー変換の基礎課程を明らかにしていくとともに、MAST装置では燃焼プラズマ領域を見据えたkeVオーダーの高温高ベータプラズマ立ち上げ手法としてのスケーリング則を確立するためのハイパワー実験を実施する。
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