研究概要 |
画像解析プログラムの開発 昨年度までに実装した汎用Ca1Morphよりも多くの形状を認識できるように、また認識した細胞の正答率が向上するように改良した。改良した汎用Ca1Morphを日本分子生物学会で発表し、システムの一部に組み込んだ細胞観察装置を特許申請した。 主成分分析による多次元形態パラメータの再編成 昨年度までに考案した二段階の主成分分析(Ohnuki et al., 2012, FEMS Yeast Res.)によってバニリン処理した出芽酵母の特徴的形態変化を抽出したところ、バニリンが出芽酵母の翻訳を阻害するという新たな効果の発見につながった。 次に、遺伝子機能の関連性を形態表現型の相違から推定するために、異なる遺伝子機能が影響を受けた場合に現れる形態的特徴の類似点と相違点を主成分分析によって抽出する手法を考えた。薬剤の作用点が異なると、薬剤処理によって引き起こされる濃度依存的形態変化に相違が現れると考えて、濃度依存的に変化する成分の主成分負荷量から形態変化の相違を抽出する方法を考えた。作用点の異なる複数の細胞壁合成阻害剤を使用して本手法の妥当性が確認された。 野生酵母の形態表現型解析 細胞形態で遺伝子機能を推定するために多くの生物学的特徴を捉えたパラメータを設定する必要がある。従来の CalMorphでは501のパラメータを使用しているが、BY系の野生型酵母を100回以上取得した場合には、約100の独立主成分でほとんどの形態情報を表現できる(Ohnuki et al., 2010, PLoS one)。より多くの独立成分で細胞形態の特徴を捉える手法を検討するために、BY系を含む37種類の野生酵母の間で形態多様性を比較したところ、BY系酵母で作成された複数の単一遺伝子破壊株よりも広い多様性が確認された。 出芽酵母遺伝子破壊株の表現型解析 遺伝子破壊株の大規模解析に着手した。各形態パラメータについて確率分布のモデル選択を行ったところ、ガンマ分布とベータ分布、二項分布、正規分布の4つの確率分布で既存のCalMorphが出力する形態パラメータを表現できることがわかった。
|