画像解析プログラムの開発 : 昨年度までに開発した汎用CalMorphの性能評価を行うために緑藻 Haematococcus pluvialisの生育を、汎用CalMorphを使用してストレス状況における細胞の生育モニタリングを行った。これにより汎用CalMorphが細胞の成長に伴って変化する細胞の特徴を捉えることができただけでなく、生育の過程で現れる遊走子などの異なる状態の細胞を判別することができ、さらにストレスに応答して蓄積する色素量を予測することができた。この結果により汎用CalMorphが生命現象を捉える性能を有していることが実証され、この成果はPlant & Cell Physiologyに掲載された。 主成分分析による多次元形態パラメータの再編成 : 昨年度までに考案した二段階の主成分分析により出芽酵母の発酵時における独立した形態変化を更に独立した形態的特徴に分解できることがわかった。この方法を応用してバニリンや細胞壁合成阻害剤、カルシウムを処理した際の形態的特徴を詳細に解析し、それぞれの刺激による細胞の応答と機能の関係を明らかにすることができた。 出芽酵母遺伝子破壊株の表現型解析 : 昨年度までに酵母細胞の形態情報がガンマ分布とベータ分布、ベータ二項分布、正規分布の4つの確率分布で表現できることを突き止めたので、これらの確率分布を使用して、必須遺伝子ヘテロ破壊変異体の野生型に対する形態異常度を見積もった。これにより二倍体酵母は必須遺伝子のうち約半分はヘテロ不全性を示し、対立遺伝子の片方を失うと異常な形態を示すことがわかった。さらに、独立な形態的特徴を使用して遺伝子変異株間の相関ネットワークを推定し、遺伝子間の機能的関連性と照らし合わせたところ、非常に多くの遺伝子機能と形態的特徴がヘテロ不全性により相関することがわかった。この結果から得られた機能と形態的特徴の関係から遺伝子の機能的カテゴリを形態オントロジーとして整理することが可能である.
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