研究課題/領域番号 |
11J06431
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
瓜生 央大 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 昼行性 / 夜行性 / 視葉 / 視葉外組織 / 時計遺伝子 |
研究概要 |
フタホシコオロギは成虫脱皮に伴い昼行性(幼虫型)から夜行性(成虫型)へとリズムの位相が逆転する。本研究では、この行性から夜行性への逆転の機構を明らかにする事を目的とし、本年度は以下の3点を重点的に行った。 1.幼虫における視葉外概日時計の検討 昼行性である幼虫の視葉外の組織に概日時計が存在するかどうか、また視葉にある中枢時計と末梢組織のリズムの関係を明らかにする目的で、視葉外組織における時計遺伝子発現を解析した。その結果、幼虫では脳、腹部最終神経節、中腸などで、時計遺伝子の発現に日周リズムが見られるが、これらのリズムは視葉切除により消失することから、幼虫における視葉外組織のリズムは自律性が弱いことが明らかになった。 2.幼虫と成虫における視葉外概日時計の比較 昼行性と夜行性の振動機構の違いを検討するために、幼虫と成虫の視葉外組織における時計遺伝子の発現を比較した。その結果、リズムの位相には両者で大きな違いは見られなかったが、幼虫では成虫に比べ発現レベルが有意に低く、振幅も小さいことが明らかとなった。これらの結果から昼行性から夜行性への活動の逆転は、成虫脱皮による末梢概日時計の振動の強化が影響すると考えられた。 3.新規時計遺伝子(cycle)のクローニング、機能解析 時計遺伝子cycのcDNA全長ををクローニングにより新たに取得し、その機能解析をおこなった。cycのdsRNA処理個体で歩行活動を解析した結果、cycのノックダウンにより周期が1時間以上延長するが、リズムは継続することが分かった。この結果は、ショウジョウバエで提唱されている振動機構では説明できず、フタホシコオロギ概日時計の振動機構はハエとは異なる可能性を示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り遺伝子レベルでの幼虫と成虫との比較検討を進めてきている。また、新規時計遺伝子の取得にも成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、幼虫と成虫の遺伝子レベルでの比較解析を網羅的に行い、活動逆転に直接的にかかわる遺伝子を同定することが課題であるが、そのため当初計画していたディファレンシャルディスプレイに加えて、次世代シーケンサーを用いた解析についても検討している。また、タンパクレベルでの解析を進めるために、抗体の作成を進める計画である。
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