研究課題/領域番号 |
11J06439
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
柿本 真代 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | メディア / 子ども / 明治 / 児童雑誌 / 教科書 / 模範的人物 / 挿絵 / キリスト教 |
研究概要 |
本年度は、大きく分けて(1)(2)の研究を実施した。 (1)日本最初期の総合的児童雑誌である『ちゑのあけぼの』について-(1)多数の資料の渉猟および緻密な分析によって、編集者や絵師の経歴を明らかにしたのち、(2)先行するキリスト教児童雑誌や欧米の児童雑誌との比較・対照を通して、『ちゑのあけぼの』が、先行する雑誌に多大な影響を受けていること、またそれら先行する雑誌は主として宣教師によってもたらされたものであり、近代日本における子ども向けメディアの発展にはキリスト教ネットワークおよびそれを介した西洋児童文化の流入が必要不可欠であったことなどを明らかにした。 (2)二宮金次郎「負薪読書」図について-(1)で用いた児童雑誌『ちゑのあけぼの』には、従来指摘されていたものよりもはるかに早く、二宮金次郎の「負薪読書」図が描かれていた。これを手がかりとして、明治から戦前に至るまで、子どもたちの「お手本」として示された二宮金次郎の、薪を背負いながら読書し歩く姿が、なぜ誕生し、定着したのかを、江戸から明治末期に至るまでの、膨大な資料分析によって明らかにした。 (1)(2)の研究は、いずれも挿絵を重要な資料として用いるところに特色があり、(1)の研究は、従来看過されてきた草創期の児童雑誌を用いながら、多くの資料との比較・分析によってその成立過程を浮き彫りにしたものであり、児童文化史のみならず、西洋文化受容史としても重要なものである。(2)の研究は、(1)をきっかけとして、明治期の児童雑誌のみならず、ひろく江戸期の絵本や往来物、明治期の教科書も調査対象としながら、模範的人物を示す典型図は、江戸期からすでに存在し、図像のもつ意味自体は変遷しながらも、明治にひきつがれたことを明らかにしたものであり、明治の絵画教育を考える上でも示唆に富んだものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、申請時点で計画していた、日本最初期の児童雑誌の成立に関する研究のみならず、新たに近代日本における模範的人物像の成立過程についても検証することができた。従って、本年は当初の計画以上に成果を出せたといえよう。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、中国で資料調査を実施し、その結果、19世紀上海で発行されていたキリスト教児童雑誌『小孩月報』を入手した。これは、日本で発行されていたキリスト教児童雑誌に瓜二つであることから、次年度は、日本最初の児童雑誌である『喜の音』や、子ども向け読み物を掲載したキリスト教機関新聞『七一雑報』について、欧米の児童雑誌や『小孩月報』を用いながらその成立を明らかにする。
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