研究課題/領域番号 |
11J06439
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
柿本 真代 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 子ども / メディア / 明治 / 児童雑誌 / キリスト教 / 清末 / 19世紀アメリカ / プロテスタント |
研究概要 |
本研究は、近代日本において、どのように児童雑誌が誕生したのか、その成立の過程と要因を明らかにすることを目的とするものであり今年度は、日本最初の児童雑誌と評価されてきたキリスト教小冊子『よろこばしきおとづれ』を対象として研究を実施した。 昨年度は、明治初期の総合的児童雑誌である『ちゑのあけぼの』が、キリスト教ネットワークを経由して流入した西洋の児童雑誌や、先行するキリスト教雑誌や新聞(『七一雑報』や『よろこばしきおとづれ』)を翻訳し、キリスト教的要素を削除して教訓性を強めることで成り立っていたことを明らかにした。その上で、課題として残ったのは、『ちゑのあけぼの』が参照したキリスト教児童雑誌やキリスト教機関新聞における子ども向け読み物は、何をもとに作られたのかという点であった。 そこで、本年度はこの課題を解決すべく、全国に点在する『よろこばしきおとづれ』を収集すると同時に、7月にはアメリカ・ニューヨークへ調査に赴いた。そこで得られた資料と昨年度上海で収集した中国最初の児童雑誌『小核月報』を比較・対照した結果、『よろこぼしきおとづれ』が元にしたアメリカの雑誌や新聞が具体的に明らかになっただけでなく、『よろこばしきおとづれ』や『小核月報』といった児童雑誌は、19世紀にアメリカで隆盛した世界日曜学校運動の影響のもと創刊されたということが明らかになった。 本研究は日本史分野の研究ではあるものの、日本のみならず、中国・アメリカの史料も同時に用いたものであり、結果として、ひとつの雑誌の成立過程を明らかにしただけでなく、アジアにおける西洋文化伝播の一様相をも提示したといえよう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、申請時点で計画していた通り、昨年度の中国での調査および本年度のアメリカでの調査に基づいていくつかの成果を発表することができた。 従って、研究は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、『少年園』や『小国民』など、明治期に人気を博した児童雑誌が、いかに英米の児童雑誌の影響を受けてきたのかということを具体的な英米児童雑誌との比較を通して明らかにすることを第一の目標としたい。 また、英米の児童文化の影響を受けながら発展したと考えられる日本の児童雑誌の中で、前近代から存在する往来物や草双紙、あるいは儒教精神などが、どのように顕れているのかについても検討すべき課題である。
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