研究概要 |
平成23年度は主として,(1)平板模型上での直流アーク放電の実験による観測,(2)化学反応を考慮した放電の流体への影響の数値解析,及び(3)極超音速流中でのアーク放電を安定化させるための制御回路の開発を行った. 放電現象の特性解明の上で基礎となる平板境界層内での放電プラズマの影響を調べるため,実験的アプローチである(1)に取り組んだ.楔付き平板と電極・セラミックスの保護部材から構成される実験模型を製作し,直流アーク放電を行った.迎角を0度に設定する事で平板境界層内での放電を,迎角を負に設定することで衝撃層内の放電の計測を行った.基礎ケースである境界層内の放電実験では,放電が定常及び非定常である場合が観測された.定常放電では放電部近傍での圧力上昇,衝撃波形成が観測された.発光分光計測により放電プラズマの構成化学種と振動温度を計測し,プラズマが主にN2,O2,N,O及びそれらのイオンから構成され,振動温度は6000K程度の高温である事が判明した。特に窒素分子の第一正帯に着目し波長600nm付近のみを透過するフィルタを用いて発光分布計測を行い,振動励起された高エネルギー窒素分子の発光が境界層内に集中している事が判明した. 放電の気流への影響を解析するため(2)に取り組んだ.(1)の振動温度計測より,プラズマでは並進-振動モードが非平衡状態であると予測されたため,2温度11化学種モデルを用いて流体の解析を行い,実験時の投入電力の一部が振動-電子励起エネルギーに変換されたとして2次元を仮定した数値解析を行った.その結果,振動温度の高い領域は発光分布計測結果同様に平板境界層内に限定される事,及び圧力の上昇・衝撃波の形成が実験と合致した. 実験(1)の放電は,場合によっては非定常となった.放電の基礎特性取得の為に安定した放電を得ることが必要不可欠であるため,(3)において放電を安定化する為の制御回路を新規に開発し,実験により放電を安定化できる事を確認した.
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降は当初の計画通り膨張波及び衝撃波と放電との干渉を実験により調べ,数値解析を行う.本年度の研究で放電安定用制御回路を開発したことで,大きな課題であった放電の安定化に成功したので今後はこの制御装置を用いて実験を進める.また,強い磁場を用いた放電プラズマの能動的な制御を検討するため,数値解析モデルを電磁力を考慮したモデルに発展させる.
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