研究概要 |
平成24年度は主として(1)膨張波を含む流れでの直流アーク放電の実験による観察,(2)衝撃波を含む流れでの放電の実験による観察,(3)アーク放電による壁面損耗を防止するための実験系の開発を行った. 平成23年度に行った極超音速流中の平板境界層上で,放電が気流に与える影響の基礎特性解明の発展として,より複雑かつ極超音速流れの典型例として膨張波を含む流れ場での気流制御特性把握の実験的アプローチである(1)に取り組んだ.平板をくの字型に中央で曲げ屈折部分で膨張波が発生する模型により,屈折部両側に電極を配置して膨張波を跨ぐ放電実験を行った.同様に,(2)についてもう一つの極超音速流の典型的な条件である衝撃波を含む放電実験を,圧縮ランプ模型の屈折部両側に電極を配置することで行った.この際,昨年度開発に成功した安定化制御回路を用いて定常放電を実現した.双方の実験において,放電に伴う圧力の変動,衝撃波の生成等を計測した.流れ場での衝撃波の生成は平板上放電の場合ほど明瞭では無かったが,(2)の場合には流れの剥離領域増大がシュリーレン法により観測された.熱化学非平衡を考慮した簡易プラズマモデルによる解析により,(2)の流れ場において循環領域に放電によるエネルギーが付与され,少なくとも並進・振動緩和時間スケール程度の間トラップされるために,電子・振動エネルギーが並進回転エネルギーに変換される事で温度・圧力上昇を引き起こし剥離域の増大に寄与する事が示唆された.剥離を伴う流れは極超音速機表面にしばしば観察される形状であり,極超音速流れ制御への応用上非常に重要である.また,N2の発光分布計測から剥離域形状の極めて明瞭な可視化に成功し,流れ場の放電可視化法としての応用も可能である. 本気流制御の実用上重要となる(3)の壁面損耗の低減は,タングステン電極周囲を工業用アルミナセラミックスで置き換えることで実現可能であると実験的に実証した.
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今後の研究の推進方策 |
来年度は当初の計画通り,本年度までに構築したプラズマモデルと実権から解明された流れ場への特性を基に,実用上有効性の高い放電形態を探索し,数値的,実験的に解析を進める.本年度の研究で放電による損耗への対策法を開発したことで,実用化への大きな課題であった壁面防護法が確立されたので,今後はこれを用いて実験を進める.
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