研究課題/領域番号 |
11J06453
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
森井 悠太 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 陸産貝類 / 分子系統推定 / 種分化 |
研究概要 |
今年度は、研究対象としている陸産貝類の近縁種2種を実験室下で交配させるための人工授精の実験を主に行った。そのためのサンプルを野外で大量に採集するために、フィールドワークに重きを置いた。それらの飼育をしながら実験系の確立を目指した。未だ交雑個体を観察するには至っていないが、取り出した精子を人工的に陸産貝類の体内に注入した際の挙動を観察し、陸産貝類の生殖器官にある粘液腺と呼ばれる器官から抽出した液体を体内に入れることで、生殖器官が注入した精子を受け入れるように反応を変えるとこことを、対象2種の陸産貝類で発見した。さらに上記2種に近縁なグループに属する別種を野外で採集し、より網羅的で詳細な研究対象種の種間・個体群間の系統関係を推定することに成功した。その結果、特に殻の形態的特徴の大きく異なる2種が互いに最も近縁な関係にあり、現在は種間の遺伝的な交流は見受けられないものの、近年まで交雑していた可能性を示唆した。また、当初の予想通り、対象2種が急激に形態を変化させ、種分化した可能性が示唆された。その成果を、2011年7月に国際学会SMAE(Annual Conference of Society fro Molecular Biology and Evolution)で「Extreme morphological change: an example of two land snails in Hokkaido, Japan」というタイトルでポスター発表をした。さらに、この成果に基づいた論文を現在執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の遂行にあたり、まずは研究対象としている北海道に生息する北方系のオナジマイマイ科種群の詳細な種間・個体群間の系統関係を推定する必要があった。しかし、そのためには、非常に採集の難しい種を入手する必要があり、そのことに成功したことが最も大きな進展であった。現在、それらのサンプルを使用した実験を終了し、結果を様々な統計的手法を用いて解析している段階である。系統推定の結果を基に、論文の執筆も開始している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、特に看目している2種、エゾマイマイとヒメマイマイの人為交配による中間の形態的特徴をもつ雑種の作成と、それを用いた実験を予定している。しかし、これまでもその実験を試みては見たものの成功させられていないため、人工的に精子を体内に送り込むことにより受精を成立させる人工授精を試みる予定である。また、雑種を作成する目的の一つに、形態的特徴を規定する遺伝子の特定が挙げられるため、そもそも雑種を作るという方法ではなく、次世代シーケンサーを用いた解析をも考慮にいれ、より現実的な方法を模索したい。
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