研究課題/領域番号 |
11J06453
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
森井 悠太 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 陸産貝類 / 分子系統地理 / 種分化 |
研究概要 |
これまでの研究で扱った、主に北海道内の研究対象2種の陸産貝類、ヒメマイマイとエゾマイマイについて、網羅的かつ詳細な種間・個体群間の系統関係を推定した論文を執筆した。現在、投稿中である。その成果を国内の二つの学会で発表した(日本貝類学会平成24年度大会・東京・2012年4月,日本生態学会第60回大会・静岡・2013年3月)。 さらに、北海道内に留まらず、北海道で対象としている種類の近縁種が分布するサハリンや極東ロシアでサンプリングを行うことができ、多くの有用なサンプルを採集することができた。特に極東ロシアで得られた陸貝は、北海道内と同様の3パターンの殻形態を示し、しかも、核とミトコンドリアDNAを解析した結果、それぞれが近縁であることが示唆された。これは、北海道内で見られる殻形態の多様化と同等のメカニズムによって極東ロシアの陸貝の殻形態が多様化した可能性を示唆するものである。独立に複数回起こるイベントは、科学的に重要な意味を持つ可能性がある。特にそのイベントが偶然では説明できないほど珍しいものであればなおさらである。北海道と極東ロシアで同様の進化のイベントが独立に起こったという可能性は、何らかの選択圧によって急激な形態の変化が生じたという仮説を強く指示する。今後より具体的な実験を行い、選択圧の特定を目指す予定である。 このように本年度は、研究対象種の生物地理学的な背景や、進化について、多くの知見を得ることができた。これらのサンプルについては、これからさらに詳しく遺伝的・形態的な特徴を調べる予定であり、今後のさらなる成果が期待できる。これらの知見は、東アジア地域の生物相の起源を解明する上で非常に大きな貢献をなすと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
採集が困難なサハリンと極東ロシアのサンプルをこの一年で入手することに成功した。ウラジオストクを拠点に活動するロシア人の研究者との協力体制が整ったことは、今後の研究の進展に大きく貢献するだろう。また、極東ロシアの陸貝においても、これまで行ってきた北海道の陸貝と同様の殻形態の分化が見られ、研究の重要な仮説として挙げている仮説を強く指示する結果が得られてきている。
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今後の研究の推進方策 |
2013年度は、博士課程最後の年として、これまであまり良い結果が得られていない、オサムシ類を用いた仮説検証の実験に重点を置く予定である。それによって陸産貝類の形態の多様化をもたらした究極要因を解明できると考えられる。さらに、発展しつつある次世代シーケンサーを用いた解析を取り入れることも考慮に入れ、それらの結果を元に博士論文を執筆し博士課程を修了することを目標としたい。そのために、論文の執筆活動にも力を注ぎたい。
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