研究課題/領域番号 |
11J06488
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大谷 淳二 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | ヒドロキシメチルシトシン / DNA脱メチル化 |
研究概要 |
本年度は、研究環境の都合、申請研究と競合する研究が発表されたことなどを受け、高等真核生物において近年発見されたDNAの化学修飾、シトシン塩基のヒドロキシメチル化とDNA脱メチル化に関する研究を行った。最近、哺乳類の胚性幹(ES)細胞、脳において、Fe(II),α-ケトグルタル酸依存的な酸化酵素であるTETファミリー蛋白質の働きにより、5メチル化シトシン(5mC)がヒドロキシメチルシトシン(hmC)に変換されることが発見され、DNA脱メチル化との関連に注目が集まっているが、その分子機構に関する知見は少ない。そこで本研究では、DNA維持メチル化に重要である、DNA維持メチル化酵素Dnmt1の酵素活性および、補因子Uhrf1のDNA結合が、5mCのヒドロキシ化によって阻害されることを生化学的に示した。これは、5mCのヒドロキシ化が、細胞分裂に依存した受動的なDNAの脱メチル化を誘導することを強く示唆する。このことから、マウスのES細胞のように、増殖が速く、豊富にhmCを含む細胞において、DNAのメチル化、ヒドロキシ化、受動的なDNA脱メチル化という動的平衡状態が成り立つと考えられた。この仮定のもと、DNA維持メチル化酵素欠失株、de novo DNAメチル化酵素欠失株のhmCの量を測定したところ、de novo DNAメチル化酵素欠失株におけるhmC量の著しい減少がみられ、hmCの産生にはde novo DNAメチル化酵素が大きな寄与を持っていることが明らかになった。また、細胞増殖阻害処理により、受動的なDNAの脱メチル化が阻害されると期待される条件において、ES細胞のhmC量が増加する現象を見出した。この現象はS期での増殖阻害に特異的に起こり、DNA複製と同時期に5mCのヒドロキシ化が行われていることが示唆された。本研究は長年にわたり注目されていながらいまだ明らかになっていない、DNA脱メチル化の分子機構の一端を明らかにする重要な足がかりになると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
予定した研究の目的とは若干異なるが、世界的な注目の集まっているヒドロキシメチルシトシン塩基の性質、細胞内での機能の一端を明らかにすることができた。これは予期していた研究計画が予定通り進行した場合よりも大きな成果であると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
ヒドロキシメチルシトシン塩基に関する研究については、細胞増殖阻害処理による、ヒドロキシ化酵素(TET蛋白質)の蛋白質量への影響を調べ、それまでの結果と合わせて論文を作成し、国際学会誌に投稿する。 また、テロメア高次構造形成に関する知見を得るため、テロメア上の蛋白質の分布を調べるためのアッセイ系を構築する。人などのテロメアDNAは(TTAGGG)のリピートであるため、DNAの配列を用いた方法は用いることができない。そこで、テロメア長を測定する実験手法と、Chip法を組み合わせ、テロメア蛋白質の、テロメアDNA上の分布を調べることを予定している。
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