研究課題/領域番号 |
11J06488
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大谷 淳二 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | テロメア / X線結晶構造解析 |
研究概要 |
真核生物のゲノムDNAは細胞分裂に伴い複製され、二本の姉妹染色分体が形成される。この際、ゲノムDNAの末端にあたるテロメア領域の最末端部分は正確には複製されず、短小化される。酵母細胞や、高等真核生物の生殖細胞、がん細胞など、無限に増殖する細胞においては、テロメラーゼと呼ばれるRNA逆転写酵素が、短小化したテロメアDNAを合成し、補っている。 最近、受け入れ先研究室からの報告によって、分裂酵母のテロメア伸長には、シェルタリン構成因子であるCcq1のリン酸化が重要であることが示され、Ccq1のテロメラーゼ制御における役割に注目が集まっている。そこで本研究ではCcq1の立体構造に関する知見を得るため、大腸菌蛋白質発現系を用いてCcq1蛋白質を調製し、プロテアーゼ限定分解実験を行った。エンドプロテイナーゼLysCを用いてCcq1を切断したところ、Ccq1の129-403、493-735アミノ酸の領域がプロテアーゼ耐性であることが明らかになり、この領域がドメイン構造をとっていることが示唆された。そこで、493-735アミノ酸の領域の蛋白質断片を調製し、結晶化を行ったところ、複数の条件から蛋白質結晶が得られ、2.5A程度の分解能までの回折強度データを収集することに成功した。今後、X線回折データの位相を決定するため、重原子置換結晶の調製を行い、結晶構造を決定する予定である。 体積排除クロマトグラフィーなどの結果から、Ccq1は、493-735アミノ酸の領域を介して、ホモ多量体を形成していることが示唆されている。結晶構造を明らかにすることで、多量体を形成できない変異体を設計し、多量体化の、Ccq1蛋白質のテロメラーゼリクルートにおける意義について検討したい。また、Ccq1の高等真核生物におけるホモログは発見されていないため、立体構造をベースにしたホモログの探索も行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初難しいと考えていたCcq1蛋白質の結晶化に成功したため、Ccq1の立体構造から、テロメラーゼのリクルートに関する知見を得ることを目指した研究を中心に進めた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの実験から、Ccq1のC末Coiled coil領域を含む蛋白質結晶が得られており、2,5AまでのX線回折強度データの収集に成功している。本年度は重原子置換した結晶を調製し、Ccq1C末領域の結晶構造解析を決定することを目指す。 Ccq1はC末Coiled coil領域を介して多量体を形成することが、予備的な実験から示唆されている。立体構造解析に成功した場合、構造から多量体が形成できない変異体を設計し、Ccq1のテロメア上での機能における二量体化の意義を検討する。
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