研究課題
前年度までに、分裂酵母のテロメラーゼ制御において重要な蛋白質である、Ccq1の493-735アミノ酸の領域の蛋白質結晶を調製する事に成功していたため、本年度は、X線データの位相情報を得ることを目指し、重原子置換体結晶の調製に取り組んだ。しかし、蛋白質の結晶化実験の再現性が悪いことが問題となった。そこで、表面残基エントロピー減少法(SERp server)を用いて蛋白質表面にアミノ酸変異を導入した所、再現性よく、同型の結晶が得られるようになった。さらに得られた結晶は、元の野生型の蛋白質を用いて得られていた結晶よりも対称性が高く、X線回折強度データの精密な測定が必要になる位相決定に有利なものとなっていた。今後、これらの変異体結晶を用いて結晶構造解析を進める。また、先行研究の結果などから、ヒトなどの高等真核生物において、シェルタリン蛋白質、TPP1のリン酸化依存的な二量体化がテロメア伸長に重要であるとの仮説を立て、それを立証するための実験を行った。293T細胞において、FLAGタグ融合およびHAタグ融合TPP1蛋白質を強制発現し、免疫沈降実験を行った。この実験から、二種のタグが融合された蛋白質どうしの相互作用が検出され、TPP1が実際に多量体化していることが示唆された。ところが、予想される二量体表面のアミノ酸残基に種々の変異を導入しても、この相互作用を壊す事ができないことから、TPP1は予想された二量体結合表面を介して結合しているのではないことが示唆された。本年度の研究によって予想された形式での多量体化はみられなかったものの、TPP1どうしの相互作用が確認された。この相互作用の生物学的意義については引き続き検討したい。
(抄録なし)
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PLoS One
巻: 8 ページ: e82961
10.1371/journal.pone.0082961