温度約6000度の太陽光球上空にはコロナと呼ばれる100万度を優に超える大気が存在し、そのさらに上空には太陽風と呼ばれるプラズマの流れがある。熱伝導や輻射による冷却に対抗して高温コロナを維持する問題はコロナ加熱問題と呼ばれ、太陽物理学上で最も困難な問題の一つである。また、太陽風プラズマを地球近傍で観測されるような秒速800kmを超える超音速にまで加速できるか、というシンプルな問題設定に対して、現在に至るまで多くのプラズマ物理学者が挑戦し続けてきた(太陽風加速問題)。 そこでまず、私はSuzuki&Inutsuka 2005の1次元計算を2次元に拡張した。1次元計算では衝撃波による波動の散逸によって太陽大気にエネルギーを供給していたが、2次元性を考慮すると乱流などによる小さい空間スケールへのエネルギー輸送(乱流カスケードなど)によって波動エネルギーを散逸させるというエネルギー散逸経路も生じる。Matsumoto&Suzuki 2012では衝撃波と乱流カスケードによるエネルギー散逸率を比較し、両者の散逸率への寄与は、コロナ底部を除いてほぼ同等であることを示した。この計算では、コロナ底部ではアルフベン波の振幅に対してアルフベン速度が格段に大きくなるため、非線形相互作用による乱流カスケードが抑えられている。この結果は、国内・海外の研究会において報告した。
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