研究課題
前年度は太陽中の電磁流体波動が伝播・散逸する過程を模擬する、大気構造のフィードバックを考慮したセルフコンシステントな数値計算を行った。その結果、冷たい大気層から熱い大気層への急激な遷移や、遷音速の質量放出が計算機中で実現された。計算結果として現れた大気構造は、太陽彩層、太陽コロナ、そして高速太陽風の性質をおおまかに再現しており、本研究成果は世界で初めての高温コロナ・太陽風生成の多次元シミュレーションとなった。しかしながら、コロナ加熱機構そのものは、非常に動的かつ非線形な過程であったため、計算結果を解析し、加熱機構を同定することは非常に困難であった。そこで、今年度は、計算結果から加熱率を求める新しい手法を開発し、計算データ中の加熱機構の特定を目指した。新たな手法を用いることで、計算データ中の加熱を、衝撃波などの圧縮性加熱と、磁気流体乱流等の非圧縮性加熱とが容易に区別できるようになった。特に太陽彩層付近では衝撃波動による加熱が卓越し、太陽風領域は乱流等の非圧縮性加熱に支配されていることが判明した。このことは波動乱流機構がどの領域まで駆動されるのかということを突き止めることに非常に重要である。また、圧縮性波動は太陽風中では加熱には直接寄与しないが、非常に大きな密度擾乱を作ることがある。この密度擾乱はこれまでの波動乱流モデルでは無視されてきたが、波動の反射を介して乱流の散逸効率を左右する重要なパラメータであることが示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
波動乱流機構の研究に不可欠である、数値計算における加熱機構の切り分けを明確に行う方法を開発でき、これ以後の解析がスムーズに行える環境が整ったため。この手法は2次元計算のみならず、これから行う予定の3次元計算においても適用できる。
まずは、計算量が少ない閉じた磁束管の系でパラメータサーベイを含めた包括的な2次元計算を行う。3次元への拡張は閉じた磁束管の系から始める。3次元化に伴い、乱流の駆動が容易になることが予想されるため、2次元計算との比較を慎重に行う。その後、太陽風につながる開いた磁束管の系でも計算を始める。
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AIP conference proceedings, Solar Wind 13
巻: (印刷中(in press)
http://www.ta.phys.nagoya-u.ac.jp/mtakuma