太陽の最外層であるコロナは100万度にまで加熱されており、そこから太陽風と呼ばれる高速のプラズマ流が吹き出している。コロナの加熱機構や太陽風の駆動機構を解明することは、太陽を理解する上で不可欠であるが、未だ議論の絶えない難問となっている。申請者らは前年度に、2.5次元の磁気流体シミュレーションを用いてAlfven波がどのように散逸し、大気を形成するかを調べた。前年度の研究では、計算機中で実際に起きている加熱率を評価する方法が未確立であったため、加熱率の見積もりに関しては不定性が大きかった。そこで、本年度は、計算機中での加熱率を評価する方法を確立することを目標とした。微分方程式を離散化する際の打切り誤差に相当する項を正確に見積もることで、Alfven波の散逸に関しては、定量的に非常に優れた見積もり方法を発見し、テスト計算においてその有用性を示した。Fast modeやSlow modeに関しては、まだ改良の余地があるが、本計算において最も重要なエネルギーキャリアはAlfven波であるため、この手法は、加熱機構を評価するのに極めて有効である。この方法を用いて今年度は、前年度に行った数値計算を再評価し、より正確な加熱機構を特定した結果を論文として提出した。さらに現在の2次元磁気流体シミュレーションコードをもとに、3次元のコードの開発も行った。3次元性は特に、乱流機構に対して大きな影響を与える。また、磁気リコネクションといったエネルギー解放機構も競合してくる。開発した3次元コードを用いて、線形波動や衝撃波管といった基本的なテスト計算を行いその動作をチェックした。また、初期の磁場形状を数値的に求めるサブルーチンも実装しており、本計算を行う一歩手前の段階まで開発を進めてきた。
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