研究課題
平面固定トリフェニルボランおよびその誘導体ついて、その性質を明らかとした。今年度は特に、平面固定トリフェニルボランの一電子還元体であるラジカルアニオン種の単離同定および平面固定トリフェニルボランと炭素求核剤であるt-BuLiとの反応から誘導されるボラシクロファンについて精力的に研究を行った。ラジカルアニオンについては、金属カリウムを用いて平面固定トリフェニルボランを化学的に一電子還元することで合成に成功し、X線結晶構造解析によりその構造を明らかとした。また、電子スピン共鳴(ESR)スペクトルの測定や理論計算を行い、その電子構造について明らかにするとともに、これまでに報告されている類似の化合物との比較を行った。その結果、平面固定トリフェニルボランラジカルアニオンは、その平面性の高い分子骨格に由来して、不対電子スピン密度がより非局在化していることを見出した。ボラシクロファンについては、この化合物が特異なホウ素-ベンゼン相互作用をもつことに着目し、研究を行った。具体的には、この相互作用をより強めるためにジメチルアミノ基を導入した誘導体を合成し、X線結晶構造解析によりその構造を明らかとした。その結果、ホウ素と近接したベンゼン環の炭素原子との間に明確な結合性相互作用があり、ベンゼン環が明らかな結合交替をもつことを見出した。さらに、NMR解析や詳細な理論計算を行い、このホウ素-ベンゼン相互作用の本質についての理解を試みた。その結果、ジメチルアミノ置換ボラシクロファンはホウ素とベンゼンが強く相互作用したσ錯体に近い構造であることを見出した。
最終年度
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件)
Chemical Communications
巻: 48 ページ: 10715-10717
dx.doi.org/10.1039/C2CC35874C