研究課題/領域番号 |
11J06562
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
常松 貴明 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | RUNX3 / Head and neck cancer |
研究概要 |
本研究の背景は申請時に比べ、本年度までに大きく変化した。本研究の対象である転写因子RUNX3は多くの固形癌において癌抑制遺伝子として知られているが、我々は口腔癌においては逆に癌の悪性形質を促進させることを見出してきた。我々の発表論文に続いて皮膚癌、悪性黒色腫、卵巣癌でも同様に癌の悪性形質を促進させる因子であると報告されただけでなく、癌抑制遺伝子ではないことを動物モデルで証明した論文も発表され、本研究の意義や重要性はますます高まってきている。本年度は転写因子RUNX3の口腔癌における癌化での役割やメカニズムの詳細及び予後に与える影響をより詳細に明らかにすることを目的とし、研究計画に基づき、以下のとおり実施した。 1.RUNX3の下流に働く遺伝子の同定 我々はRUNX3がRUNX familyと呼ばれる転写因子群に属すことから、標的遺伝子の転写を実際に制御することで機能していると仮定した。実際にDNA結合領域に変異を挿入したRUNX3を過剰発現させた細胞株では我々が過去に報告したapoptosisの抑制や足場非依存性増殖の促進などの表現型が認められなかった。そこで過去に作製したRUNX3の発現の低い口腔癌細胞株にRUNX3を遺伝子導入し、安定性にRUNX3を高発現する細胞株と親株の遺伝子発現を網羅的にマイクロアレイ法にて解析した。この2つの遺伝子発現プロファイルを比較し、発現変動を示すものをRUNX3標的遺伝子候補とした。これらのなかでもRUNX3の機能に関与すると考えられるもの、また種々の口腔癌細胞株でのRUNX3の発現と相関関係にあるものを絞り込み、2つの遺伝子を同定した。実際にこれらの遺伝子はRUNX3高発現細胞株で著明に発現上昇していた。 2.RUNX3トランスジェニックマウスの作製 Keratin14(K14)プロモーターを有する発現ベクターにRUNX 3cDNAを組み込み、このDNAをマウス胚にインジェクションし、トランスジェニックマウスを作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RUNX3の下流に働く遺伝子の同定に関し、当初の計画ではルシフェラーゼアッセイまで行い、標的遺伝子プロモーターに直接結合するところまで計画していたが、標的遺伝子の絞り込みに時間を要したため、本年度は標的遺伝子候補の同定までに留まった。
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今後の研究の推進方策 |
1.RUNX3の下流に働く遺伝子の同定 本年度同定した標的遺伝子候補に対し、実際にRUNX3が直接発現を制御するかルシフェラーゼアッセイなどを用いて検討を行う。さらにRUNX3はこれらの遺伝子の発現を制御することで機能しているかを遺伝子導入やsiRNAによる発現抑制を行い、検討する。 2.UNX3トランスジェニックマウスの作製 本年度作製したトランスジェニックマウスにおいて、実際に皮膚や口腔粘膜特異的にRUNX3を発現しているか免疫組織化学やWestern blot法などを用いて検討を行う。確認できれば経時的に組織学的検索を行う。
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