研究課題/領域番号 |
11J06573
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
正木 彰伍 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 観測的宇宙論 / 銀河進化 / 銀河ハロー / 銀河間宇宙塵 |
研究概要 |
本年度は、主に銀河進化に関する研究を推進した。東京大学数物連携宇宙研究機構の吉田直紀准教授と共同で、銀河周りのダスト分布に対する解析的モデルを開発した。近年、Menardらによって銀河周辺のダストの平均的な分布が観測された(Menard et al. 2010)。この結果から導かれたダスト分布は、銀河中心から10Mpcというビリアル半径の100倍ほどの距離に至るまで単一のべき乗で近似できることがわかった。これは素朴に考えれば、単一の銀河に付随しているダストが非常に遠方まで続いているという信じがたい状況を意味している。そこで我々は、ダスト分布が銀河からどれほど遠方まで続いているか、モデル開発を通して議論した。まず、ハローモデルという解析モデルの枠組みの中でダスト分布を計算する定式化を行った。そして、カットオフスケールを持った個々の銀河のダスト分布の形と銀河ハロー内に含まれるダストの総量についてモデルの二つを独自に開発、提案した。モデルフィッティングを通して、カットオフスケールがビリアル半径の2~3倍の場合に、観測された分布を非常に良く再現することがわかった。これは銀河周りのダスト分布が、観測結果から素朴に予想されるよりずっと小さいものであることを意味している。また大スケールのダスト分布の振幅から、銀河ハロー内に含まれるダストの全宇宙における合計量についても議論を行った。以上の結果については、既に私が筆頭著者として論文にまとめ、学術誌Monthly Notices of Royal Astronomical Societyにおいて出版が決定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、銀河周辺のダスト分布について、その観測結果を説明するための理論モデルの構築を行った。既に数度の学会発表を行い、学術雑誌への採録が決定している。加えて、海外の研究者と共同で銀河の空間分布に関する研究も行うなど、活発な活動ができたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後も銀河進化に関する研究を推進していく。既に3件の共同研究を進めており、結果も出始めている。具体的には、銀河の空間分布の色依存性に関する研究、塵分布を考慮の入れた場合の宇宙赤外線背景放射の計算とLuminous red galaxiesの進化とfinger-of-god効果に関する研究である。これらを早急に完成させ、暗黒物質粒子の検出実験に関する研究も推進していく。以上の計画は、大規模シミュレーションやハローモデルと呼ばれるモデル計算を用いる点で共通しているため、研究上の問題点は少ないと考える。
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